規制委が電力4社のCNOを招き意見交換、「安全性向上評価」活用など議論
16 Oct 2020
規制委と電力による意見交換の模様(インターネット中継)
原子力規制委員会の安全性向上に関する検討チームは10月16日、東京電力、中部電力、関西電力、九州電力の原子力部門責任者(CNO)と意見交換を行った。
規制委では、事業者経営トップと安全文化醸成活動で、複数社のCNOを集め技術的課題で意見交換を行っているが、同検討チームは許認可プロセスのあり方なども含め、今後の原子力施設の継続的な安全性向上に向けて有識者を交え幅広く議論するもの。
同日の会合で、各社は新規制基準で原子力発電プラントの定期検査ごとに求められる「安全性向上評価」の活用を焦点に意見を表明。その中で、九州電力常務執行役員の豊嶋直幸氏は、再稼働の先陣を切った川内1、2号機を始め、玄海3、4号機で、これまで計8件の「安全性向上評価」届出を行ったとした。それぞれ5、7月に実施した川内1、2号機「安全性向上評価」(リンクは1号機に関する九州電力発表資料)での自主的な安全裕度向上対策として、桜島の火山灰層厚評価を踏まえた燃料取替用水タンク上部における溶接強化工事の実施をあげた上で、「事業者自らの安全性向上対策を実行できる範囲の拡大」に向け、ガイドライン整備の検討を規制委員会に要望。
各社とも同様の意見を述べたのに対し、行政法の立場から板垣勝彦氏(横浜国立大学大学院国際社会科学研究院准教授)は、「新しい技術を導入する際に、現在の仕組みがディスインセンティブとなっているのでは」と、これらを共通の課題ととらえ議論を深めていく必要性を示唆した。
関西電力副社長の松村孝夫氏は、美浜3号機事故後の安全文化醸成活動や、同社系列の原子力安全システム研究所による研修カリキュラム開発などの取組を説明。「トップのコミットメントと現場のマインドは車の両輪」と強調し、協力会社との意思疎通を今後の改善点の一例にあげた。
東京電力常務執行役の牧野茂徳氏は、福島第一原子力発電所事故の教訓を踏まえた安全性向上対策を説明。その中で、「専門性から一歩離れたところから安全性向上に対する気付きを得る取組」の近況として、新入社員も含めた安全性向上コンペで若手から意外な発案が出ることや、女性社員による「クールなでしこパトロール」のメリットをあげ、「現場を見て新たに発見する」重要性を強調。
自社の取組に加え、中部電力副社長の倉田千代治氏は、原子力エネルギー協議会(ATENA)と規制委員会による公開の技術的議論に触れ、「全電力で共通する課題があり、議論の成果を個社に展開していくもの」と意義を述べた。
各社から安全性向上の取組に関する説明を受け、関村直人氏(東京大学工学系研究科教授)は、「マネジメントシステムの一つに位置付けられている」と、経営上重点化されていることを評価。焦点となった「安全性向上評価」は再稼働が前提となっているが、同日の意見交換を振り返り、審査中のプラントへの新技術導入に係る議論が不十分だったことを指摘した。
更田豊志委員長は、「安全性向上評価」に関し「社会からの信頼を得ることが必要」などと質的向上の重要性を述べたほか、各社に対し、間もなく発生から10年を迎える福島第一原子力発電所事故について改めて振り返るよう求めた。