フラマトム社とGA社、モジュール式の小型ヘリウム冷却高速炉開発で協力
19 Oct 2020
©Framatome
仏国のフラマトム社と米国のジェネラル・アトミックス・エレクトロマグネティック・システムズ(GA-EMS)社は10月13日、GA-EMS社の技術に基づくモジュール式の小型ヘリウム冷却高速炉(FMR)を共同で開発することになったと発表した。
安全性と操作性を高めた電気出力5万kWの FMRはCO2を排出しないだけでなく、工場で製造し現地で組み立てることで建設費の大幅ダウンと、出力の段階的増強を実現できるという。フラマトム社の米国エンジニアリング・チームは、いくつかの重要構造物とシステム、および機器について設計を担当。GA-EMS社が主導する両社のチームは、2030年初頭にもFMRの設計、製造、建設および運転に関する技術を実証し、2030年代半ばまでに商業建設するとの見通しを明らかにしている。
GA-EMS社のS.フォーニー社長は「フラマトム社とともに、安全かつコスト面の効率性が高く出力の拡張縮小が可能な原子炉を設計する」との抱負を表明。両社が先進的原子炉技術で数10年以上にわたり蓄積してきた経験を統合し、米国が必要とするクリーン・エネルギーを将来的に確保していきたいと述べた。
フラマトム社のB.フォンタナCEOも「今回の協力は、後の世代のためにクリーンな世界を創造するという先進的原子力技術の開発で、GA社とこれまで築いてきた長期的連携の下で進める」とコメント。先進的原子炉や小型モジュール炉(SMR)のシステムや機器の設計で両社が獲得した経験と専門的知見を通じて、このようなビジョンの実現につなげたいと述べた。
両社の発表によると、FMRでは再生可能エネルギー源の出力変動にともなう負荷追従運転への迅速な対応、全体的に高度な効率性を備えた原子炉設計を目指している。受動的安全性を備えるとともに、冷却材として化学的に不活性で爆発や腐食のない無害なヘリウムを使用。運転する際に水を必要としないため、事実上ほとんどすべての場所に立地できるとした。
また、エネルギーを電力に転換する時、構造の複雑な蒸気発生器や加圧器を使用しないのでコストが抑えられ、燃料交換は約9年間不要である。ガス・タービンには「直接ヘリウム・ブレイトンサイクル」を採用したことから送電網へのレスポンスが早く、発電機の出力変化速度(ランプ速度)は最大で毎分20%、通常運転時の全体的な効率性も45%と高い。さらに、原子炉出力の自動制御とターボ機器によって炉内温度が一定に保たれ、負荷追従運転にともなう熱サイクル疲労も影響緩和が可能だとしている。
(参照資料:フラマトム社、GA社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月14日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)