ベラルーシ政府、初の商業炉の起動に向けて出力上昇プログラムを許可
28 Oct 2020
©Rosatom
ベラルーシの非常事態省は10月23日、同国初の商業炉となるベラルシアン原子力発電所1号機(120万kWのPWR)(=写真)の起動に向け、出力を段階的に上げていくプログラムの実施を許可した。
これは、同発電所の建設工事を請け負っているロシア国営の原子力総合企業ロスアトム社が26日付けで明らかにしたもので、ベラルーシ規制当局の決議に基づいて下された。同炉では8月初旬に燃料が初めて装荷されており、今回の判断により、ロスアトム社傘下の総合エンジニアリング企業「ASEエンジニアリング社(JSC ASE EC)」とベラルシアン原子力発電所(国営企業)は、同プログラムの下で1号機の起動に必要な様々な作業を実施。ベラルーシ政府は2021年第1四半期にも、同炉の営業運転を開始できると予想している。
同プログラムでは具体的に、同炉の出力を1%から50%まで徐々に上昇させる。40%レベルで送電網に接続し、50%ではプラント動特性試験などが行われる。これらの作業は今年の12月までに完了する予定である。
ウクライナと国境を接するベラルーシは、1986年のチェルノブイリ事故で多大な放射線被害を被ったが、国内のエネルギー資源が乏しいため1次エネルギーの8割を輸入に依存。こうした背景から、1990年代に原子力の導入に関する実行可能性調査を行っており、福島第一原子力発電所事故が発生した直後の2011年3月15日、同国初の原子力発電所建設に関する協力でロシアと合意した。
ベラルシアン原子力発電所建設の計画については、2012年11月にロシア政府が総工費の90%をカバーする100億ドルの低金利融資を25年間で提供することを約束。2013年11月にフロドナ州オストロベツで第3世代+(プラス)の120万kW級ロシア型PWR(VVER)「AES-2006」として1号機が着工したのに続き、2014年4月には同型の2号機が着工している。
1号機では今年4月、機器の性能・機能を運転時と同じ高温高圧下で確認する温態機能試験が完了。同炉の機器・設備が運転と安全性に関する要件を満たしていることが確認された。8月からは燃料集合体の初装荷を始めとする設備の起動段階に移行しており、今月11日に同炉は核分裂反応を安定した状態に維持するのに必要な1%未満の出力「最小制御可能出力(MCP)レベル」に到達、同炉の物理特性が設計要件に適合していることが確認された。
同発電所ではこのほか、6月に2号機で機器・配管を洗浄する作業が始まった。建屋に機器や設備を据え付ける最終段階に行われる作業で、動的と静的両方の安全系を化学的に脱塩した水で洗浄。安全系のみならず通常運転システムのポンプについても操作性がチェックされ、一次系で静水圧試験などを実施する準備が始まるとしている。