ウクライナのエネルギー協会、政府に原子力産業の発展促進を勧告へ
29 Oct 2020
©Ukrainian Energy Association
ウクライナ・エネルギー協会(UEA)は10月22日、国内原子力産業界の今後の開発方向に関する円卓会議において、国家経済やエネルギー供給保証の要である原子力産業が将来的にもこれらの役割を担い続けられるよう、政府に支援を勧告することで合意した(=写真)。
同協会は、ウクライナの民生用原子力発電公社や石油製品企業、関連投資会社などで構成されるエネルギー業界団体。今後、原子力産業界が新型コロナウイルスの感染拡大といった危機を乗り越え、さらなる発展を遂げるためのアクション計画を策定するよう、ウクライナ政府とエネルギー省に宛てた嘆願書を作成する方針である。
今回の円卓会議には、UEA幹部のほかに同国の国家原子力規制検査庁(SNRC)や民生用原子力発電公社のエネルゴアトム社、およびその他の科学関係機関から代表者が出席したほか、関係するトレーダーや専門家、分析家も参加した。主な議題は新たな電力市場とその課題、発展の見通しといった条件の中で、ウクライナ原子力産業界の現状を分析すること。また、エネルゴアトム社における今後の開発や計画の方向性と投資プロジェクト、関係法規制を改正する必要性についても話し合われた。
最終的な議論の総括として、参加者全員は以下の点で合意した。すなわち、
・原子力はエネルギー供給保証の要であるとともに、国家経済の発展を保証するため、将来的にもその役割を担い続ける。
・原子力産業を維持・発展させる方策や重点分野を特定するため、戦略文書を取りまとめる必要がある。
・エネルゴアトム社の財務体質を健全な状態に回復させることは、新型コロナウイルスによる感染の世界的拡大という状況の中、国の経済や産業の維持に向けた最も重要な任務の一つである。
・エネルゴアトム社が公平な条件で、電力市場への参加が可能になるメカニズムを確保するには法改正が必要である。
ウクライナは1986年のチェルノブイリ事故直後、新規の原子力発電所建設工事を中断したが、国内の電力不足と原子力に対する国民感情の回復を受けて1993年にこのモラトリアムを撤回した。近年はクリミアの帰属問題や天然ガス紛争等により旧宗主国であるロシアとの関係が悪化したが、P.ポロシェンコ前大統領は「ロシアからの輸入天然ガスがなくても切り抜けられたのは原子力のお蔭」と明言。「原子力による発電シェアが約60%に増大した過去4~5年間はとりわけ、原子力発電所が国家のエネルギー供給保証と供給源の多様化に大きく貢献した」と述べた。
また、ウクライナ内閣は2017年8月に承認した「2035年までのエネルギー戦略」の中で、原子力は2035年までに総発電量の50%を供給していく目標を明記。2019年5月に就任したV.ゼレンスキー大統領は、前政権のこの戦略を実行に移すため、原子力発電開発のための長期プログラムの策定を命じた。さらに、今年9月には「エネルギー部門の状況の安定化と原子力発電のさらなる開発に向けた緊急方策のための大統領令」を公布している。
(参照資料:UEAの発表資料(ウクライナ語)、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月28日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)