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ポーランドの化学素材メーカー、米USNC社製SMRの建設に向け実行可能性評価

05 Nov 2020

MMRエネルギー・システムの完成予想図
© Ultra Safe Nuclear Corporation

ポーランドのシントス・グリーン・エナジー(SGE)社は11月4日、米ウルトラ・セーフ・ニュークリア社(USNC)が開発した小型モジュール炉(SMR)「マイクロ・モジュラー・リアクター(MMR)」のエネルギー供給システムをポーランドで建設するため、実行可能性評価の実施を含む協力合意協定をUSNC社と結んだと発表した。

SGE社は化学素材メーカーであるシントス社のキャピタル・グループに所属しており、その戦略に沿ってCO2を排出しないエネルギー・ソリューションを欧州で積極的に模索している。このため、MMRエネルギー・システムがCO2を出さずに供給する水素や熱・電力を、シントス社が本拠地であるポーランド、およびチェコ、オランダ、仏国で操業する化学素材製造プラントで活用する。また、欧州産業界の様々な製造企業に対しても、同システムの幅広い商業利用を勧めていく考えである。

USNC社ではこのような熱電併給と水素生産の能力を持つMMRエネルギー・システムを構築するため、現在、韓国の現代エンジニアリング社を含む世界中の複数の大手企業と連携協力中。SGE社の具体的な計画では、石炭や天然ガスを使う既存の化学素材プラントを、MMRエネルギー・システムを採用したプラントでリプレースすることになる。

USNC社とSGE社はまた、同システムの水素生産技術に付随する付加価値の範囲内で、CO2を出さずに産業規模で水素を生産できるような、経済効率の高い熱電併給方法の開発プロジェクトを進めている。これについてはすでに、欧州委員会(EC)が主導する産業メカニズム「欧州共通利益重要プロジェクト(Important Projects of Common European Interest: IPCEI)」から財政支援が受けられるよう、両社が共同でポーランド開発省に申請書を提出済みとなっている。

シントス社キャピタル・グループのオーナーであるM.ソウォヴォフ氏は「我々が保有する複数の製造施設で、最終的に脱炭素化を実現し競争力も強化されるよう、短期間で建設可能な有力な技術を選定するつもりだ」と明言。その上で、「MMRは非常に洗練された安全な技術であり、他に例を見ないほど我々のニーズに合っている」と述べ、同技術はシントス社の脱炭素化戦略実現と競争力強化に役立つとの見解を示した。同氏はまた、「ポーランド産業界全体の脱炭素化に向けて、MMR技術は様々な解決策の一部となることを確信する」としている。

USNC社のMMRは熱出力1.5万kW、電気出力0.5万kWという第4世代の小型モジュール式高温ガス炉で、燃料にはシリコン・カーバイドで層状に被覆されたウラン粒子を用いる。同社によれば、いかなる事故シナリオにおいても、MMRでは特段人の手が加わらなくてもすべての熱が安全に環境に出され、メルトダウンが発生するリスクもない。

2019年3月にカナダのプロジェクト開発企業のグローバル・ファースト・エナジー(GFP)社は、パートナー企業であるUSNC社のMMR実証炉をカナダ原子力研究所(CNL)のチョークリバー・サイトで建設するため、SMRとしては初めて「サイト準備許可(LTPS)」をカナダ原子力安全委員会(CNSC)に申請した。このプロジェクトでは、チョークリバー・サイトを擁するオンタリオ州の州営電気事業者オンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社が実証炉の建設や運転で協力する予定。CNSCは2019年7月から、このプロジェクトの環境アセスメント(EA)プロセスを開始している。

(参照資料:シントス社USNC社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月4日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

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