米ニュースケール社、開発中SMRの出力をさらに増強
11 Nov 2020
©NuScale Power
米オレゴン州のニュースケール・パワー社は11月10日、開発中の小型モジュール炉(SMR)「ニュースケール・パワー・モジュール(NPM)」で1基あたりの出力をさらに25%増強した7.7万kW(グロス)のモデルを設計したと発表した。
これは、先進的な試験やモデリング・ツールを活用した結果によるもので、同社はまず2018年6月、モジュール統合型PWRとなるNPMで予定していた出力5万kWを20%増強して6万kWに拡大。同モジュールを12基連結した場合の合計出力も60万kWから72万kWとなったが、今回のさらなる出力増強により、NPM原子力発電所の最大出力は92.4万kWに拡大する。同社はその一方で、NPMモジュールを4基だけ接続した30.8万kWの発電所、および6基接続した46.2万kWの発電所オプションも提供が可能だと強調している。
5万kW版のNPMについては今年9月、原子力規制委員会(NRC)が設計認証(DC)審査で、SMR設計としては初めて「標準設計承認(SDA)」を発給しており、同設計は今のところSMR商業化レースの先頭を走っている。ニュースケール社としてはこのほか、6万kW版の「ニュースケール720」についても2021年第4四半期にSDAの取得を申請するほか、7.7万kW版の申請書も2022年に提出する方針。NPMの最初のモジュールは、2027年にも顧客への納入が可能になると明言した。
同社のJ.ホプキンズ会長兼CEOは、「当社のエンジニアは今回再び、我々の技術が第一級のものであり、設計の安全性に影響を及ぼさずに、かつてないレベルのコスト削減と顧客の要求仕様に合わせた生産が可能であることを実証した」と表明。同社は今後も、SMRの商業化レースで世界をリードする企業であり続けると述べた。
今回の発表によれば、出力を25%増強したモジュール12基のkWあたりの建設単価は、3,600ドルから約2,850ドルに低下する。このほか発電所としての出力が90万kW台になったことで、同モジュールは100万kW級原子炉の市場においても十分競合可能な設計に近づきつつある。ニュースケール社のSMRはまた、発電所の規模や出力だけでなく、運転の柔軟性、コスト面においても顧客に幅広いオプションを提供、建設工事の簡素化や工期の短縮、工事費の削減といった点で技術革新をもたらすとした。
このようなことから、ニュースケール社は同設計を通じて、送電網の規模が小さい島国や送電網そのものから切り離された遠隔地域への電力供給、石炭火力発電所のリプレース用電源、クリーン・エネルギーへの移行目標達成といった顧客の様々なニーズに応えられると述べた。
米国内ではすでに、ユタ州公営共同電力事業体(UAMPS)がエネルギー省のアイダホ国立研究所内で同社製SMRの建設を計画している。国外では、カナダのブルース・パワー社が2018年11月、同社製SMRのカナダ市場導入を目指して同社と協力覚書を締結。カナダの原子力安全委員会は今年1月から、NPMの「許認可申請前設計審査(ベンダー審査)」を開始した。このほか、ヨルダンやルーマニア、チェコ、ウクライナの国営電気事業者や原子力委員会が同社製SMRの導入を検討しており、ニュースケール社は実行可能性調査の実施に向けた了解覚書をそれぞれと締結済みである。
(参照資料:ニュースケール社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)