日英が核融合と廃止措置へのロボット工学適用で技術開発協力
21 Jan 2021
©UK Government
英国政府は1月20日、原子力施設における廃止措置の自動化や核融合研究に革新的なロボット工学・自律システム(RAS)技術の適用促進で、日本とロボット工学分野の研究・技術開発協力を実施すると発表した。腕の長いロボットアームなどを活用して、英国セラフィールド原子力複合施設の閉鎖済み設備や福島第一原子力発電所の廃止措置を一層迅速かつ安全に遂行する。
このプロジェクトは「LongOps」と呼称されており、4年計画で1,200万ポンド(約17億円)を投じる予定。この資金は英国の「原子力廃止措置機構(NDA)」と政府外公共機関の「研究・イノベーション機構(UKRI)」、および東京電力が均等に負担し、英国原子力公社(UKAEA)がカラム科学センター内で運営する「リモート処理・ロボット試験施設(RACE)」を使って進めていく。同プロジェクトにより、世界規模で発展する可能性を秘めた新しい革新的なロボット技術を創出する。同プロジェクトはまた、日英両国における科学・エンジニアリング能力を向上させるとともに、核融合に関連する技術の開発を促進、雇用を生み出す直接的な効果もある。
英国政府のビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)は2015年3月、国内のRAS分野の発展支援を表明したが、これは2014年7月に専門家グループが政府に提言した「RAS分野の成長戦略(RAS 2020)」に賛意を示したもの。BEISはその際、同技術の有望な活用先として原子力を含む5つの部門を指摘していた。これを受け、英国政府が2014年以降、RASプロジェクトに投じている約4億5,000万ポンド(約637億円)の一部がLongOpsにも活用される。
発表によると、閉鎖された原子力施設や核融合施設の廃止措置は非常に複雑な大規模プロジェクトであり、安全に実施するには非常に多くの時間を要する。こうしたプロジェクトにロボット工学やデジタル・ツイン技術(仮想空間に物理空間の環境を再現し、様々なシミュレーションを通じて将来予測を行う技術)を活用することは、効率性や作業員の健康リスク低減などで非常に有効である。
また、LongOpsの主な特徴は、洗練されたデジタル・ツイン技術を駆使してデータを詳細に分析し、施設の運転管理における潜在的な課題を予測すること。デジタル・ツイン技術によって、作業の合理化や生産性の改善を図り、現場で実施する前に仮想世界で試験を行うことができる。さらに、LongOpsで開発する技術は、カラム科学センターに設置されている「欧州トーラス共同研究施設(JET)」などの核融合実験施設の運転終了後、設備の維持や解体等に適用が可能である。
今回の日英協力について、A.ソロウェイ科学・研究・イノベーション大臣は、「原子力に内在する素晴らしい潜在能力を解き放つには、国際的なパートナーと手を携えて協力することが大切だ」とコメント。無限のクリーンエネルギーを生む可能性がある核融合研究を支援しつつ、原子力施設の安全な廃止措置を実行していくと強調している。
参照資料:英国政府の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月20日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)