ブルガリア、コズロドイ7号機を建設する可能性を再検討
25 Jan 2021
©Bulgarian Government
ブルガリア政府は1月20日の閣議後、国内唯一の原子力発電設備であるコズロドイ原子力発電所(100万kWのロシア型PWRの5、6号機のみ稼働中)で、ロシア製の機器を使って7号機を建設する可能性を改めて検討すると発表した。
新規の原子炉建設で必要とされるアクションなど、7号機の建設可能性についてエネルギー相が前日に取りまとめた調査報告書を今回、承認したもの。政府はプロジェクトが首尾良く進展すれば、10年以内に同炉で発電を開始できるとの見通しを明らかにした。また、これを実行することにより、欧州連合(EU)が目標に掲げている「2050年までに気候中立(CO2の排出と吸収がプラスマイナスゼロ)を達成」、を前進させる一助にもなるとしている。
ブルガリアは2007年にEUに加盟する際、西欧式の格納容器を持たないコズロドイ発電所1~4号機(各44万kWのロシア型PWR)をすべて閉鎖しており、現在は5、6号機だけで総発電電力量の約35%を賄っている。同発電所以外では、ロシアとの協力により1980年代にベレネ原子力発電所(100万kWのロシア型PWR×2基)の建設計画に着手したが、コストがかかりすぎるため2012年に中止が決定。その代わりに、ウェスチングハウス(WH)社製AP1000設計を採用したコズロドイ7号機の建設案を一時期検討した。しかし、資金不足のため計画は進展せず、WH社は2015年4月、「この件に関する株主の合意は期限切れになったが、ブルガリアとの協議は今後も継続する」と発表していた。
一方、ベレネ発電所建設計画についてはその後、倉庫に保管している1号機用の長納期品や2号機の一部機器を最大限に活用して、完成させる案が浮上。ブルガリア電力公社は2019年3月に戦略的投資家を募集しており、同年12月には候補企業を5社に絞り込んだことを明らかにした。
エネルギー省のT.ペトコワ大臣は今回、報告書の概要をB.ボリソフ首相に説明する際、ブルガリア内閣が2020年10月、コズロドイ7号機の建設に向けて最新技術を有する米国企業と交渉を開始するよう同発電所に命じた事実に言及した。ペトコワ大臣はこれを受けて、同発電所や国外の専門家で構成される作業グループの設置を指示。7号機の建設サイトにおける環境影響声明書では、規制当局がWH社のAP1000とロシア企業のVVER設計2種類を承認していたため、同作業グループは報告書の取りまとめ作業の中でWH社の幹部とも協議し書簡を交換したが、最終的に「コズロドイ7号機の建設では、ベレネ発電所用に調達した機器を利用するのが経済的であり、環境面や技術面でも適している」と指摘した。
報告を受けたボリソフ首相は、「プロジェクトの推進で重要かつ迅速な手順を盛り込んだ素晴らしい戦略だ」と評価しており、このインフラ・プロジェクトは国家安全保障やエネルギーの供給保証、およびエネルギー源の多様化という点で非常に重要だと説明。その上で「7号機の建設では、国家予算や税金を投じて製造したベレネ計画の機器を活用する」としたほか、「7号機の後には8号機も建設する」との抱負を述べた。
報告書が政府に承認されたことから、ペトコワ大臣は今後、規制当局がコズロドイ7号機の建設用に認めたサイトや、ベレネ計画用に調達した機器を7号機で合理的かつ最大限に活用するために必要な措置を取る。同相はまた、原子炉の新設に向けた資金調達モデルの構築準備を進めるほか、小型モジュール炉(SMR)など新しい技術を採用した原子力発電所を建設する可能性についても調査を継続するとしている。
(参照資料:ブルガリア政府(ブルガリア語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月22日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)