ロシアの鉛冷却高速実証炉「BREST-300」に建設許可
12 Feb 2021
「BREST-300」の構造図©Rosatom
ロシア国営の原子力総合企業ロスアトム社は2月11日、シベリア化学コンビナート(SCC)で鉛冷却高速炉(LFR)のパイロット実証炉「BREST-300」(電気出力30万kW)を建設するための許可が、連邦環境・技術・原子力監督庁(ROSTECHNADZOR)から10日付でSCCに発給されたと発表した。
SCCはロスアトム社傘下の燃料製造企業TVEL社の子会社で、シベリア西部のトムスク州セベルスクに位置している。「BREST-300」は冷却材として鉛を、燃料としてはウラン・プルトニウム混合窒化物(MNUP)燃料を使用することから、SCCは今年中の完成を目指して専用のMNUP燃料製造加工施設を建設中。2020年6月からは、同施設で機器の設置作業も始まっている。
「BREST-300」本体については2026年末までに完成させる方針で、ロスアトム社は2019年12月、原子炉建屋とタービン建屋、および関連インフラ施設の総合建設契約をエンジニアリング企業のTITAN-2社と263億ルーブル(約373億円)で締結済みである。
「BREST-300」と燃料製造加工施設、および同炉から出る使用済燃料専用の再処理施設は「パイロット実証エネルギー複合施設(PDEC)」を構成することになっており、PDECはロスアトム社が進めている戦略的プロジェクト「ブレークスルー(PRORYV)計画」の主要施設となる。同社はこのプロジェクトを通じて、天然ウランや使用済燃料を有効活用するという原子燃料サイクルの確立を目指しており、そのために開発実績の豊富なナトリウム冷却高速炉(SFR)に加えて、LFRの研究開発も並行して進めていると述べた。
「BREST-300」の建設許可が降りたことについてロスアトム社は、「建設プロジェクトに関するROSTECHNADZORの課題すべてが解決したことを意味している」と説明。今後は、ロシアと独立国家共同体(CIS)の50以上の技術革新センターが参加する「ロシア技術移転ネットワーク(RTTN)」の包括的プログラムに沿って、主要なプロジェクトを実行に移す。
また、建設プロジェクトの特殊性を考慮して、ロスアトム社は「BREST-300」の安全審査中に、新たな規則や基準を設定した。それらは、冷却材として鉛を使用する同炉の設計と安全な運転に関する規制、あるいは原子炉容器や機器・配管等に十分な強度があることを保証する要件など。「BREST-300」の特徴を踏まえて同社が設定したこれら合計16項目の基準は、すでに承認され発効済みとなっている。
(参照資料:ロスアトム社(ロシア語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月11日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)