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欧州委 フェッセンハイム発電所への早期閉鎖補償金支払いを承認

02 Apr 2021

フェッセンハイム原子力発電所©EDF

仏国では2015年に同国で成立した「エネルギー移行法」に基づいて、フェッセンハイム原子力発電所(92万kWのPWR×2基)が2020年に2基とも早期閉鎖された。これにともない、同国政府が事業者の仏電力(EDF)に対して支払った補償金の一部、およびこれから支払う分について、欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会(EC)は3月23日、EUの国家補助規則に照らしてその正当性を認めると発表した。

エネルギー移行法では、現在約75%の原子力発電シェアを2025年までに50%まで削減し、原子力発電設備も2015年レベルの6,320万kWに制限すると明記。しかし2018年になって、E.マクロン大統領は期限を10年間先送りすると発表している。

同国では最新設計を採用したフラマンビル3号機(165万kWのPWR)が建設中であることから、EDFはその代わりとして最も古いフェッセンハイム発電所の2基を早期に閉鎖。仏国政府は2020年12月に、EDFとの条件協約に従い固定部分の3億7,020万ユーロ(約482億円)をEDFに支払った。残りの変動部分はこの閉鎖による2041年までの発電量不足をカバーするのが目的であり、この期間中の電力卸売価格とフェッセンハイム以外の90万kW級原子炉の発電量に基づいて決定される。

ECは仏国政府とEDFの間で交わされたこの条件協約を詳細に分析した結果、「国家補助規則が定められている「欧州連合の機能に関する条約(TFEU)」では事業者の利益がほかの選択肢より優先されることになっており、この規定を排除することはできない」と表明。この補償金は、原子力以外の電源による発電を促進することで仏国のエネルギーミックスを多様化するのが主旨であり、フェッセンハイム発電所の廃止措置作業を合理的に進める効果もある。そのためECではこの補償金は、仏国がこのような政策を実行に移す上で必要かつ適切なものだと結論付けた。また、補償金は、EU域内の競争原理や貿易に歪みを生じさせる可能性よりもプラスの要素が多いとECは指摘している。

(参照資料:ECの発表資料(仏語)、原産新聞・海外ニュース、ほか)

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