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中国当局、台山1号機で小規模な燃料破損の発生を認める

17 Jun 2021

台山原子力発電所©CGN

米国のニュース専門チャンネルCNNが15日「中国・広東省の台山原子力発電所(175万kWの欧州加圧水型炉:EPR×2基)で放射能漏れの発生疑惑」と報道した件で、中国生態環境部(省)(MEE)は16日、傘下の国家核安全局(NNSA)の担当者がこの疑惑を否定したと発表した。同発電所1号機で小規模な燃料破損が発生したが、これは原子力発電所における「一般的事象」であると説明。同機は2018年の運開以降順調に稼働しており、周辺環境にも異常はないと強調している。

この発表はNNSA担当者への質疑応答という形式で行われ、同担当者はまず質問に対し、1号機の一次冷却材の中で特定の放射能の量が増加したことを認めた上で、「通常運転の範疇である」と明言。燃料の製造や輸送、装荷時の不可避な要因により、発電所の運転中に燃料棒がわずかに損傷することがあり、1号機では6万本以上の燃料棒のうち、5本前後の被覆部に損傷が生じたことが推定されている。これは燃料棒全体の0.01%未満であり、燃料集合体で最大規模の損傷が生じる(設計時の)推定確率の0.25%よりはるかに低い。世界では多くの原子力発電所で、燃料棒で小規模破損が発生した後も運転を続けているとした。

担当者はまた、CNNの「放射能漏れ報道」について、「一次系における放射能レベルの上昇は放射能の漏えい事故とは全く異なる」と指摘。一次系は格納容器の内側にあり、物理的バリアとして原子炉冷却システムの圧力バウンダリと格納容器の気密性が保たれている限り、放射能が外部環境に漏洩することはない。これら2つのバリアは今のところ健全で、台山発電所周辺のモニタリングでも、バックグラウンドレベルに異常はなく、漏えいは発生していないと述べた。

さらに、「台山発電所の運転を継続するため、NNSAが発電所外部で検出する放射線許容限度の引き上げを承認した」とCNNが報じたことについて、NNSA担当者は「事実ではない」と否定した。NNSAは確かに、冷却材中の特定の希ガスについて許容限度引き上げを検討・承認したが、これはサイト外の放射線検出量とは無関係だと強調した。

NNSAの今後の対応に関して担当者は、「1号機の一次系の放射能レベルを引き続き注意深く監視し、発電所と周辺環境のモニタリングを強化。同機での指導と監督も強化して放射能レベルを厳密に監視する措置を講じる」と述べた。同時に、国際原子力機関(IAEA)や同機の供給者であるフランスの規制当局とも、緊密な連絡体制を維持していくとしている。

台山発電所の2基は仏フラマトム社製の最新型PWRである「EPR」を採用し、2009年11月と2010年4月に相次いで本格着工した。中仏最大のエネルギー協力プロジェクトとなった同建設計画は、台山原子力発電合弁会社(TNPJVC)が担当。同社に対しては、中国広核集団有限公司(CGN)と広東省の電力会社が合計70%出資しているほか、フランス電力(EDF)が残りの30%を出資している。

EPRを世界で初めて採用したのは、2005年にフィンランドで着工したオルキルオト3号機であり、2007年にはフランスでも、初のEPRとしてフラマンビル3号機が着工した。しかし、これらでは様々なトラブルにより完成が遅れており、台山1号機はこうした経験も踏まえて、2018年12月に世界初のEPRとして営業運転を開始。同2号機も2019年9月に営業運転を開始した。このほか英国では、EDFエナジー社がヒンクリーポイントC原子力発電所の2基にEPRを採用し、2018年12月から建設工事を実施中である。

 

加藤官房長官、中国側に透明性ある説明を期待

加藤官房長官

加藤官房長官(政府インターネットTVより引用)

加藤勝信官房長官は17日の記者会見で台山原子力発電所での放射能漏れに関する報道に言及。関係省庁を通じフラマトム社に対し事実関係の確認を行っているとの状況を説明した上で、「今後の推移について中国側が透明性をもってタイムリーに国際社会に説明することを期待する」と述べた。

原子力規制委員会の更田豊志委員長は16日の定例記者会見で、「日中韓3国の規制当局によるチャンネルを通じ中国に対し情報共有を求めているが今のところ回答はない」としている。また、技術的観点から、「PWRの燃料破損は国内でも幾つか事例がある。燃料破損のメカニズムが前例のないものならば、技術評価検討会での議論の対象となりうる」と述べ、国際機関などによる調査を通じた詳細解明を待つ考えを示した。

(参照資料:中国生態環境部(中国語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの6月16日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

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