総合エネ調、「2050年カーボンニュートラル」のシナリオ分析で6団体よりヒア
01 Jul 2021
エネ調基本政策分科会の模様(インターネット中継)
総合資源エネルギー調査会の基本政策分科会(分科会長=白石隆・熊本県立大学理事長)は6月30日、「2050年カーボンニュートラル」実現のためのエネルギー・電源構成に関し、6つの研究機関・関連団体よりヒアリングを行った。〈配布資料は こちら〉
同分科会では、2050年の発電電力量で、再生可能エネルギーを約5~6割、原子力と化石燃料+CCUS(CO2回収・有効利用・貯蔵)を合わせて約3~4割、水素・アンモニアを約1割とする「参考値」を示した上で、複数のシナリオ分析を行うこととしており、前回5月13日の会合で地球環境産業技術研究機構より分析結果について説明を受けている。
今回会合の冒頭、梶山弘志経済産業相は、「2050年に向けては技術の進展や社会情勢の変化といった様々な不確実性が存在する」と、複数のシナリオを想定し課題や制約を明らかしていく必要性を強調。パリ協定に基づく国際約束とともに、11月のCOP26を控え気候変動対策推進に向けた国際的気運の高まりにも言及し、「『2050年カーボンニュートラル』と安価なエネルギー供給の両立を踏まえて議論を深めてもらいたい」と述べた。
ヒアリングで、「デロイト トーマツ コンサルティング」社は、IEAで開発された長期エネルギー分析プログラム「TIMES」によるシナリオ分析を紹介。カーボンニュートラル社会実現に向けて、再生可能エネルギー・原子力・火力を活用しコストを最小化する「コスト最小化ケース」と、再生可能エネルギーを95%導入し既存電源(原子力・火力)を代替する「再エネ大量導入ケース」のシミュレーション結果について説明した。それによると、発電限界費用(さらに1kWh発電するための費用、エネルギーミックスの経済合理性を評価する一つの指標となる)は、最大で現状より、「コスト最小化ケース」で約2倍に、「再エネ大量導入ケース」で約5倍へと上昇する可能性が示され、「エネルギーシステム全体が柔軟性を持たないことが電力価格に影響を与える」などと指摘。
また、日本エネルギー経済研究所は、費用を最小化するエネルギー・技術の導入量推計モデル「IEEJ-NE_JAPAN」による分析結果を披露。太陽光・風力の導入に係るコスト評価の不確実性や森林環境への影響などをあげ、原子力発電の新設がカーボンニュートラル達成に貢献しうることを示唆したのに対し、委員の隅修三氏(東京海上日動火災保険相談役)も、「原子力利用が制約されれば東京都区部面積の12倍に及ぶ太陽光パネルと膨大な容量の蓄電池設備が必要」とするIEAビロル事務局長の言葉を引用し、再生可能エネルギーへの過度な期待を危惧した。
この他、国立環境研究所、自然エネルギー財団、地球環境戦略研究機関、電力中央研究所がシナリオ分析結果について説明。各団体同士でも議論が交わされ、コスト評価手法の見直し、メディアの果たす役割なども指摘された。
「100%自然エネルギーのエネルギーシステム」の構築を掲げシナリオ設定を行った団体もあったが、山口彰氏(東京大学大学院工学系研究科教授)は、今回のヒアリングについて、「コスト最小化と再エネ導入最大化の観点からの評価だった」と振り返った上で、将来の不確かさを考慮しバランスのとれた政策が策定されるよう、「エネルギーの選択に伴うリスクのコントロール、レジリエンス維持の視点からの評価も必要」などと指摘した。