原子力学会、山口会長が就任会見
12 Jul 2021
日本原子力学会の新会長(第43代)に東京大学大学院工学系研究科教授の山口彰氏がこのほど就任。7月9日に記者会見を行った。〈原子力学会発表資料は こちら〉
山口氏はまず、「『2050年カーボンニュートラル』社会という極めてチャレンジングな目標が掲げられ、その実現のためには原子力の技術・学術が大変重要な役割を担うものと確信している」と強調する一方、「原子力を取り巻く環境は難しい状況にある」と述べ、その一因として、原子力技術の価値と現状を伝えるべき学会のこれまでの活動が不十分だったことを認識。今後、学会として、原子力のエネルギー利用だけでなく、多様な分野での放射線利用を可能とする技術の有用性を伝えるとともに、福島第一原子力発電所事故がもたらした深刻な事態、経験、教訓をしっかりと心に刻み、今後の原子力分野の活動に反映していかねばならないとした。
3月に福島第一原子力発電所事故発生から10年を迎えたのを機に原子力学会では、若手リーダーによる「原子力の未来像を考える」テーマを盛り込んだシンポジウムや事故調査に係る提言のフォローアップなどを実施。これらを通じて整理された課題を踏まえ、山口氏は学会の今期重点事項として、(1)専門知を社会に伝えていく交流の場を持つ、(2)会員数の減少傾向に歯止めをかけ活動を活性化させる、(3)コロナと共生する新しい時代の学会活動を工夫する――をあげた。
新型コロナがまん延したこの1年を振り返り、「困難な環境の中でどのように学会活動を行うか模索し続けた」とする山口氏は、今後の対話活動のあり方について問われたのに対し、「高校生・大学生、マスコミ他、学会に入っていない人でも原子力に強い関心を持っている人がたくさんいる」と強調。その上で、現在まだ具体案の段階にはないが、オンラインを通じ専門家以外の人たちも含め意見交換を行う場を立ち上げる考えを示した。
山口氏は、現在総合資源エネルギー調査会の基本政策分科会および原子力小委員会の委員として、エネルギー政策に係る議論に参画中。同氏は、文部科学省の原子力人材育成に関する作業部会主査などを歴任したほか、日本原子力文化財団の一般向け解説・資料集「原子力総合パンフレット」の監修にも当たっており、原子力教育の分野で広く活動している。