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ロスアトム社、海上浮揚式原子炉で採掘会社に電力供給へ

28 Jul 2021

©JSC “Afrikantov OKBM”

ロシア国営の原子力総合企業ロスアトム社は7月23日、ロシア極東チュクチ自治区で計画されているバイムスキー銅鉱山プロジェクトに「海上浮揚式原子炉(FPU)」を使って電力を供給するため、同プロジェクトの法的所有者であるGDKバイムスカヤ社と協定を締結したと発表した。

同鉱山は世界でも最大規模の未開発銅鉱山の1つと言われており、カザフスタンの採掘企業のKAZ ミネラルズ社は2018年8月、同プロジェクトを9億ドルで買収した。今回の協定では、銅鉱山と処理施設で構成される「バイムスキーGOK」に対し、ロスアトム社が供給する電力の長期的な全量売買契約を2022年4月までに締結することが明記された。

チュクチ自治区のペベクでは現在、世界初の海上浮揚式原子力発電所(FNPP)となった「アカデミック・ロモノソフ号」が2020年5月から電力を供給中。同発電所では電気出力3.5万kWの軽水炉式小型炉「KLT-40S」が2基搭載されているのに対し、バイムスキー銅鉱山プロジェクトでは、ロスアトム社が出力5万kWの小型炉「RITM-200M」を2基搭載した「最適化FPU(OFPU)」を利用する方針である。

GDKバイムスカヤ社によると、同鉱山では合計4艘のOFPUを利用する計画。このうち3艘がメインの発電ユニットとなる一方、残り1艘はメイン・ユニットの修理時や燃料交換時のバックアップに使われる。ロスアトム社はすでに、これらの製造を傘下のアトムエネルゴマシ社で開始しており、2026年末に最初の2艘を同鉱山に近い東シベリア海沿岸の、ナグリョウィニン岬の作業水域に納入。バイムスキーGOKに通じる送電網にこれらを接続した後、翌2027年末に3艘目を設置するとしている。

今回締結された協定は、バイムスキー鉱床地区の開発に向けた投資プロジェクトを実行に移す「包括的ロードマップ」の枠組の中で締結された。同ロードマップは2021年7月1日、ロシアのY.トルトネフ副首相兼極東連邦管区大統領全権代表が承認済みである。ロスアトム社はまた、今回の協定の重要な点として、北極圏への投資が一層効率的に行われるよう、電力産業関係の法改正を促す意図が両社にあると説明。北極圏内で長期のプロジェクトを実行する投資家に対しては、十分な見返りを与える効果的なメカニズムが必要だと強調している。

(参照資料:ロスアトム社KAZ ミネラルズ社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの7月27日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

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