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ウクライナ、複数のAP1000建設に向けWH社と独占契約

01 Sep 2021

独占契約の調印式©Energoatom

ウクライナの原子力発電公社であるエネルゴアトム社は8月31日、国内で複数の原子力発電所で「AP1000」を建設していくため、同設計を開発した米国のウェスチングハウス(WH)社と独占契約を締結したと発表した。

この契約で、エネルゴアトム社は具体的に、建設進捗率28%で工事が停止しているフメルニツキ原子力発電所4号機(100万kWのロシア型PWR=VVER)にAP1000を採用するなどして、その完成計画にWH社の参加を促す方針。また、その他の原子力発電所も含めてさらに4基のAP1000を建設するとしており、これらの総工費は約300億ドルになるとの見通しを示した。

契約の調印式は、米ワシントンD.C.にあるエネルギー省(DOE)の本部で開催された。ウクライナのV.ゼレンスキー大統領が立ち会い、エネルゴアトム社のP.コティン総裁代理とWH社のP.フラグマン社長兼CEOが契約書に署名。DOEのJ.グランホルム長官とウクライナ・エネルギー省のG.ハルシチェンコ大臣も出席した。

エネルゴアトム社の発表によると、同社はウクライナ政府の長期目標達成に向けてWH社のAP1000技術を選択した。今回の契約により、同社はクリーンで信頼性が高く、コスト面の効果も高い原子力発電を活用し、同国の脱炭素化達成につなげたいとしている。

ウクライナでは2017年8月、P.ポロシェンコ前大統領の内閣が「2035年までのエネルギー戦略」を承認しており、総発電量に占める原子力の現在のシェア約50%を2035年まで維持していくと明記。現職のV.ゼレンスキー大統領も2020年10月、「このエネルギー戦略を実行に移すため、政府は今後も原子力発電を擁護し、その拡大を支援していく」と表明している。また、同国で稼働する全15基のVVERはすべて、旧ソ連時代に着工したもの。このためウクライナの規制当局は、経年化が進んだ11基で順次運転期間の延長手続を進めるなど、原子力発電設備の維持に努めている。

エネルゴアトム社のコティン総裁代理は今回の契約について、「AP1000は実証済みの技術を採用した第3世代+(プラス)の110万kW級原子炉であり、モジュール方式の設計を標準化することで建設期間やコストの縮減が可能と聞く。また、完全に受動的な安全系を装備するなど優れた特長を持っている」などと説明。AP1000設計を長期的に活用していくことで、エネルゴアトム社では最高レベルの安全性と高い信頼性を備えた、環境にも優しい革新的な原子力発電所の運転が可能になるとしている。

WH社のフラグマン社長兼CEOは、「ウクライナで稼働する既存の原子力発電所を支援するため、当社はすでに燃料その他のサービスを提供中だ。今回の契約により、当社とエネルゴアトム社の長年にわたる連携は一層強化される」と表明。同社の原子炉技術を使って、ウクライナの将来を低炭素なエネルギー社会に近づける重要な一歩になるとの認識を示した。

同CEOはまた、「AP1000は米原子力規制委員会(NRC)の認可を受けた第3世代+の原子炉の1つ」と指摘。欧州やアジアなど米国以外の国々でも認可されており、中国ではすでに運転中の4基のAP1000が良好な実績を残していると述べた。さらには、米国のボーグル原子力発電所で建設中の2基が完成間近くなっており、インドでは6基の建設プロジェクトへの採用が決まるなど、AP1000は中・東欧も含めた世界中で建設が検討されていると強調した。

(参照資料:WH社エネルゴアトム社(ウクライナ語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)

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