原子力産業新聞

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科学リテラシーの底上げを

2025.01.06

あけましておめでとうございます。

2019年12月に「原子力産業新聞」を現在のWEBマガジン形式にリニューアルして以来、早くも5年が経過しました。

かつては「業界内の壁新聞」との立ち位置であった「原子力産業新聞」ですが、今やGoogle検索のトップに躍り出るまでに成長しています。――「原子力」「新聞」で検索すると。

これもひとえに、支えてくださっている読者の皆様、広告主の皆様、そしてJAIF会員の皆様のおかげです。ありがとうございます。

ですが「原子力産業新聞」の秘めたるポテンシャルは、こんなものではありません。WEB検索で巷の新聞記事に辿り着いた時、いよいよここからというところで「これより有料」や「個人情報の登録必要」や「5秒ほどおとなしく広告を見ろ」となった経験はありませんか?私はこの手のチラ見せが大嫌いです。――ですがマーケティング的には上手いなと感心しています。実に狡猾です。いつかどこかで使おう。

一方「原子力産業新聞」は正々堂々完全無料、全ページ公開をモットーとしています。どこから記事に飛んできても、ナニモノにも邪魔されずに最後まで読むことができます。これは実にユニークなことであり、他紙との圧倒的な違いと言えましょう。それもこれも、自治体、大学から企業に至る、原子力関連団体400社さんの会費に支えられた「原子力産業新聞」だからこそ可能なのです。

しばしば学生さんから「原子力産業新聞をレポートで使わせてもらってます」とのお言葉を頂戴します。これは記事品質の高さだと胸を張りたいところですが、まぁ面倒なしに読めるということと、全文コピペできるというところが大きいのだろうなとは思います。日本語ですし。ですが裏を返せば、「原子力産業新聞」は次世代層にもやすやすと届く、ということです。つまり自分で言うのもなんですが、このように素晴らしいプラットフォームを業界情報の伝播だけに使うのはもったいないと思うのです。

現在私たちの社会を取り巻く共通の課題は何か?それは科学リテラシーの底上げであることに、異論はないでしょう。や、もちろん他にもいろいろあるでしょうけれども。社会全体の科学分野のリテラシーを高めると、トンデモをトンデモだと見分けることができるようになりますよね。放射線で、食品照射で、ALPS処理水で、私たちを悩ませてきたトンデモを駆逐することができるはずです。

かくいう私も、放射線やトリチウム問題ではエラそうなことを言っておりますが、ついこの前まで、遺伝子組換え食品を口にすると体内の遺伝子が組み変わると信じておりました。食品を購入するとき、カタカナの添加物が入っているものは体に良くないと購入を躊躇しておりました。規制値未満であればなんの問題もないというのに、分野が異なった瞬間に白痴状態となります。ショウペンハウエルの言う「自分の家における愚者は、他人の家における賢者より物識りなり」地で行っているわけですな。

ではこのように恥ずかしいリテラシーを高めるにはどうしたらいいのか?これはもう貪欲に知ること。これに尽きるわけです。もはや中高年には難しいかもしれませんが、次代を担う次世代層ならば、まだまだ貪欲に知識を吸収し、周囲にも影響を与え、ひいては社会全体の科学リテラシーを高めてくれるのではないかと勝手に期待しています。

こうしたことも踏まえ、これからの「原子力産業新聞」は、社会全体の科学リテラシー向上に少しでも資するよう、貪欲に取り組んで参ります。そのためには原子力分野であろうがなかろうが、臆することなく積極的に取り上げていく所存です。すでに多くの企画が私の頭の中でゴウゴウと渦巻いています。あとは、実行に移す勇気のみ。

2025年も「原子力産業新聞」をよろしくお願い申し上げます。

石井敬之

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