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2025年05月27日
- 新聞記事の影響力は「拡散不可」でますます縮小か
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二〇二五年五月二十七日 新築戸建て住宅への太陽光パネルの設置を義務付ける東京都の改正条例が今年四月から施行された。「太陽光は環境にやさしく、電気代が節約できる」といったミスリード記事が多い中、産経新聞(四月六日付)に「再エネ賦課金 家計にずしり」と題したおもしろい記事が載った。こういう記事こそ拡散を期待したいが、大手新聞の記事はほとんど拡散しない。そこがSNSと比べた場合の最大の弱点かもしれない。再エネ賦課金の累計は二十五兆円 原子力発電への風当たりが依然として強い背景には、太陽光発電を全国くまなく拡大すれば、原子力がなくても電気エネルギーがまかなえるという幻想があるからだと、私は常々考えてい
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2025年05月07日
- 「正しいことはすごくつまらない」にメディアは迫れるか
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二〇二五年五月七日 気候危機を煽るニュースが毎日のように流れているが、今回は「それって本当にエビデンス(科学的根拠)があるのですか」と真摯に問いかける書籍を紹介したい。世の中が熱くなっているときこそ、世間の「空気」に抗う冷静な思考が必要だ。メディア関係者や気象関係者にとっては必読のテキストといってもよいだろう。大規模停電でも地球温暖化が関係? 四月二十九日朝に放映されたテレビ朝日の「羽鳥慎一モーニングショー」を見ていて、びっくり仰天した。スペインで起きた大規模停電の原因について、アナウンサーの羽鳥慎一氏が「これも地球温暖化の影響かな」と言ったのだ。そして、ゲストコメンテーターも「サイバー攻撃か
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2025年04月21日
- カドミウムの基準超え事件 一石四鳥の「あきたこまちR」が救世主へ!
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二〇二五年四月二十一日 四月上旬、秋田県内の農事組合法人が出荷したコメから基準値を超えるカドミウムが検出された。コメは首都圏の広範囲の店で販売され、自主回収が進む。こうした悲劇的事件を避ける救世主が、カドミウムをほとんど含まない画期的な新品種「あきたこまちR」だということを重ねて強調したい。これを大きく報じないのは、メディアの怠慢だろう。基準超えは重大な失態 秋田県が四月四日に公表したリリースによると、農事組合法人・熊谷農進(秋田県小坂町)が出荷した約八六トンのコメの一部から食品衛生法で定められた基準値〇・四ppm(ppmは百万分の一の単位。一ppm=〇・〇〇〇一%)を超える〇・四七~〇・八七
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2025年04月03日
- 迷走する除染土問題 今こそ「課題解決型報道」の出番だ!
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二〇二五年四月三日
東京電力・福島第一原子力発電所事故で発生した除染土の再利用をめぐるニュースが目立ってきた。その中で中間貯蔵施設を抱える双葉町の伊沢史朗町長が町内で再利用を検討する考えを表明、停滞打破へ向けて大きな一石を投じた。いまこそ伊沢町長の勇気ある行動を結実させる「課題解決型報道」が必要ではないだろうか。
除染土の四分の三は放射線量が低い
福島第一原子力発電所の事故では、放射性物質が周囲の住宅地や農地などに降り積もった。その除染作業で削り取られた土と草木がいま大熊町と双葉町にまたがる中間貯蔵施設に保管されている。その総量は東京ドーム約十一杯分の約一四〇〇万立方メートル。国は二
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2025年03月17日
- 剣の達人「座頭市」と原子力と石炭火力 共通する大切なものとは何か
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二〇二五年三月十七日
NHKの大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』を見ている方はご存じだろうが、三月二日と九日に放送された第九話と第十話で、盲目の富豪である鳥山検校(男優は市原隼人さん)が、女優の小芝風花さんが演じる花魁「瀬川」を身請けするシーンが出てくる。なぜ、この話が原子力や石炭火力と関係するのか、私なりの考えを披露しよう。
座頭市は互助組織の身分だった
千四百両(いまなら一億四千万円らしい)もの身代金を払って、花魁の瀬川(実在した人物)を妻にした鳥山玉一(とりやまたまいち)検校とはいったい何者なのか。「検校」は「けんぎょう」と読み、官職の名称だ。実は、日本には室町時代から、
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2025年03月03日
- 洋上風力発電に逆風 メディアはもっと風力の問題を多角的に検証しよう!
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二〇二五年三月三日
風力発電に逆風が吹き始めたというニュースが目立ってきた。米国のトランプ大統領が風力を敵視しているのも逆風になっているようだ。ただ、よくよく考えてみれば当たり前の風が吹いているに過ぎない。大手メディアはもっと風力の限界を定量的にしっかりと検証してほしい。
NHKのニュースウオッチ9
「洋上風力発電に逆風」と題して報じられたNHKの「ニュースウオッチ9」(二〇二五年二月十八日放送)を見た人は、日本各地の沖合で計画されている洋上風力発電事業がコスト高で暗礁に乗り上げているとの印象をもったのではないか。私も見ていて、そう思った。
同ニュースによると、卸電力大手の電源開
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2025年02月03日
- 気候変動訴訟に見る「人権侵害」の主張は 自縄自縛の構図か
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二〇二五年二月三日
若い世代による気候訴訟が名古屋地方裁判所で続いている。どうにも気になるのが「気候変動は人権侵害だ」という考え方だ。地球温暖化問題に強い関心をもつことはよいが、人権を楯に「CO2が気候危機の原因だ」と主張することは、結果的に自らの首を絞めることになるという私なりの逆説をあえて述べてみたい。
気候変動は「人権侵害」
全国の十~二十代の男女十六人が二〇二四年八月六日、気候変動の悪影響は若い世代の人権を侵害しているとして二酸化炭素(CO2)排出量の多い火力発電事業者十社を相手取り、CO2の排出を削減するよう求める訴訟を名古屋地方裁判所に起こした(毎日新聞八月七日付)。今月
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2025年01月14日
- 「大手既存メディアへの不信」これが今年の言論空間のキーワードか
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二〇二五年一月十四日
二〇二五年を特徴づけるキーワードは何だろうか。最近の米国大統領選や兵庫県知事選を見ていて、「大手既存メディアへの不信」がキーワードのひとつのように思えてきた。特にリベラルメディアへの不信感とその影響力の低下が確実に起きているような気がする。原子力の話題も交えて、その背景を論じてみたい。
大手既存メディアへの不信が根底に
みなさんもすでにご存じのように昨年十一月の兵庫県知事選で前知事の斎藤元彦氏が再選された。斎藤氏は議会の不信任決議を受けて失職したあと知事選に臨んだ。当時、どのテレビ番組や新聞を見ても、斎藤氏を批判するニュースばかりだった。そのような言論空間で斎藤
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2024年12月25日
- 敦賀2号機の不許可理由 「可能性を否定できない」は科学的な判断か?
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二〇二四年十二月二十五日
原子力関連で令和六年(二〇二四年)最大のニュースと言えば、福井県の敦賀2号機の再稼働の不許可だろう。「不許可」自体もビッグニュースだが、それを決めた原子力規制委員会の「活断層の可能性は否定できない」という主観的な判断理由も、歴史に残るだろう。ただ何か釈然としない気持ちがわいてくるのはなぜだろうか。
原子力規制委員会(山中伸介委員長・委員五人)は十一月十三日、定例の会合で日本原子力発電株式会社が所有する敦賀原子力発電所(福井県敦賀市)の2号機(PWR・百十六万kW)の再稼働申請を不許可(不合格)とすることを全会一致で決めた。二〇一二年に原子力規制委員会が発足して
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2024年12月16日
- 脱炭素の原子力とエタノール その魅力をどう伝えるか?
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二〇二四年十二月十六日
いまや大半の先進国でエタノール(アルコール)を混ぜたガソリンがスタンドで販売されているが、日本ではほとんど普及していない。その原因のひとつは、エタノールの魅力(メリット)を日本のメディアがしっかりと伝えないからだ。米国のエタノール事業者は、その魅力をどう伝えたらよいかを探る消費者意識調査を行っていた。原子力を考える上で参考になりそうだ。
エタノールは脱炭素の救世主
十二月上旬、世界一のエタノール生産国である米国を訪れた。米国には現在、エタノールの生産事業者が約五〇社あり、エタノール工場は全米で二〇〇か所もある。ガソリンにエタノールを一〇%混ぜた「E10」といわ
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2024年11月18日
- リニア中央新幹線と原子力 同じ巨大プロジェクトでも何が違うのか?
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二〇二四年十一月十八日
東京と名古屋を四十分で結ぶリニア中央新幹線に関するニュースが最近になって増えてきた。ちょうど十月半ば、山梨のリニア実験線の体験試乗会に参加した。時速五〇〇kmを実感しながら、同じ巨大プロジェクトの原子力との「差」を考えてみた。
時速五〇〇kmを実感
私が体験乗車したのは十月十六日。JR東海がメディア関係者を招いて行った。現在、山梨県笛吹市から上野原市までの約43kmの路線が完成している。この実験線は東京~名古屋間の路線の一部であり、完成したあとはそのまま利用される。
ワクワク気分でさっそく乗ってみた。リニアは超電導磁石を用いた浮上走行だ。最初のうちはレール
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2024年10月10日
- EVの失速で浮上するエタノール ハイブリッド車の逆襲なるか
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二〇二四年十月十日
みなさんも日々のニュースでお気づきのように、電気自動車(EV)が失速し始めた。代わって人気なのが、エンジンと電気モーターで走るハイブリッド車だ。この流れを受けて、日本で大きな注目を集めそうなのが車の燃料としてのエタノール(アルコール)である。脱炭素の救世主とも呼ばれるエタノールは今後、日本のエネルギー事情をどう揺るがすのか?その未来像を描いてみた。
欧米でEVが失速
八月以降、EVの失速をうかがわせるニュースが後を絶たない。読売新聞は八月二十三日付で「米EV軌道修正」との見出しで米国の車大手フォードが「スポーツ用多目的車(SUV)タイプのEVの開発を中止した」と報