©︎COP28
2023/12/01
COP28の初日である11月30日、昨年のCOP27で設立に合意した「損失と損害(loss and damage)基金=ロスダメ基金」に関するより詳細な内容を定めた文書が、早くも採択された。主要な炭素排出国である先進国が、気候変動で損害を被っている開発途上国に対し賠償する基金で、世界銀行が運営する。
厳密には、12月12日に予定されている会議終了までは、すべての文書は最終決定ではない。しかし今回の合意は、会議に出席した各国の代表者らからスタンディングオベーションで迎えられるなど、議長国であるアラブ首長国連邦(UAE)の面目躍如たる幕開けとなった。
合意文書によると、ロスダメ基金の初期総額は4億ドルを超えた。UAEが1億ドルを拠出。EUは2億4,500万ドル(ドイツからの1億ドル含む)を拠出し、英国は5,000万ドル強、米国は1,750万ドル、日本は1,000万ドルを拠出する。
ドイツのS.シュルツェ経済協力・開発相は、「ドイツとアラブ首長国連邦が先頭に立ち、気候変動による損失と損害に対応する新しい基金に自国から拠出する意欲と能力があるすべての国に出資を呼び掛けたい。30 年前にはまだ発展途上国だった国々でも、今では世界規模の気候変動に対する責任を負う余裕があるはずだ」と強調した。
基金設立に向けた昨年の合意は、途上国における気候変動緩和の緊急的な必要性を認め、炭素排出大国が途上国へ過去何十年にもわたる損害を償う機会を生み出したという点で、非常に大きな一歩と評価されたが、具体的な金額規模などが明記されておらず、基金の持続可能性を疑問視する向きもあった。今回、あらためて金額が示されたことで基金実現に向けての大きな後押しとなりそうだ。また、他の先進国には今後、基金の出資額を発表するよう圧力がかかることになるだろう。
気候変動に関する国連枠組条約(UNFCCC)のS.スティエル事務局長は、「各国政府にとってCOPのスタートを切るきっかけとなり、交渉当事者はここドバイで真に野心的な成果をもたらすためにこれを活用するべきだ」と高く評価している。