原子力産業新聞

COP28

グローバル・ストックテイク 28回目となるCOP28開催地はUAEのドバイです。前回のCOP27から持ち越しとなったロス&ダメージ(気候変動の悪影響にともなう損失および損害)対策など、気候変動に関するさまざまなテーマが議論されます。

COP28:公式サイドイベントで日本の原子力水素などを紹介

2023/12/07

COP7日目となる12月6日、「電力部門ならびに排出削減困難なセクターにおける原子力の活用」をテーマにトークセッションが開催された。COP公式イベントとして 開催された同セッションには、日本から東京大学公共政策大学院の有馬純特任教授と、日本原子力産業協会の植竹明人常務理事が登壇した。

有馬教授は、日本では「原子力か、再生可能エネか」の二項対立的な議論があるが不毛だ、東京大学が実施したシナリオ分析では、最小限のシステムコストで電力部門の脱炭素を実現するのは、再生可能エネルギーと原子力をともに最大限活用するケースである、と指摘。また、非電力部門の脱炭素化には電化が必須だが、電化ではまかなえない鉄鋼・セメント等の産業では水素を利用した技術が寄与するとし、グリーン水素製造にあたっては「再生可能エネルギーを唯一の選択肢とするのではなく、原子力も活用するべき」との考えを示した。

また岸田政権が今年4月に打ち出した「今後の原子力政策の方向性と行動指針」に言及し、日本は、既存原子炉の再稼働と運転期間延長、次世代革新炉の開発と建設、核燃料サイクルの推進、国内サプライチェーンや人材の維持/強化に取り組んでいくと説明。「すでに12基のPWRが再稼働しているが、来年には福島第一事故以来初めて、2基のBWRの再稼働が計画されている」との見通しを示した。

植竹氏は、非電力部門の脱炭素化のカギを握るのは原子力由来水素だと指摘日本で開発が進められている水素製造の具体例として、日本原子力開発機構の高温ガス炉を用いた「熱化学法ISプロセス」や、関西電力が10月から敦賀市で開始した「水素トラッキング」を紹介した。これは、原子力由来の水素を原子力発電所の発電機冷却に利用しつつ、製造から利用に至るまでの一連の流れの追跡(トラッキング)を実証するもので、原子力由来水素を原子力発電所で利用する国内初の取り組みだ。

なおセッションではそのほか、サイモン・ワクター氏(Quantified Carbon社シニアアナリスト)やヘザー・ファーガソン氏(オンタリオ・パワー・ジェネレーション社上級副社長)から、スウェーデンやカナダでの事例等が紹介された。

現地取材

  • 石井 敬之

    総括課長にして編集長。COPへの参加は昨年のエジプト以来2度目。特技は料理。

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