ジャベール議長 ©︎COP28
2023/12/14
COP最終日となった12月13日、参加国約200か国が、化石燃料からの移行を全ての国に求めることで合意。成果文書となる「UAEコンセンサス」を採択し、閉幕した。なお今回の成果文書ではCOP史上初めて、炭素排出量を削減するための重要なアプローチの1つとして「原子力」が明記された。
焦点であった化石燃料については、その段階的な削減を明確に約束する文言は盛り込まれていない。しかし各国に対し、「公正に科学的知見に則って2050年までのネットゼロを達成するために、エネルギーシステムにおける化石燃料からの移行に向けた世界的な取り組みに貢献」するよう求めるなど、化石燃料からの移行を初めて明確に要求しており、COPとして化石燃料からの移行という方向性を打ち出すことに成功した点で、UAEコンセンサスは高く評価されている。
UAEコンセンサスでは、化石燃料からの移行手段に言及しており、移行手段として初めて原子力が取り上げられた。これは排出量削減が困難な分野や水素製造等におけるゼロ炭素/低炭素テクノロジーの中で、再生可能エネルギーやCO2回収・貯留(CCUS)と並ぶテクノロジーとして原子力がリスト入りしたもの。これまでCOPの場では原子力が話題になることがあっても、文書化されたことはなく、今回初めてCOPに原子力の名が刻まれた。
COP28の議長としてUAEコンセンサスをとりまとめたスルタン・アル・ジャベールUAE産業・先端技術相は今回の合意について、「地球規模の気候変動問題へ心から誠実に取り組む人々にとっての真の勝利。 これは現実的で、結果を重視し、科学を重視する人々にとっての真の勝利だ」と高らかに宣言した。
世界原子力協会(WNA)のサマ・ビルバオ・イ・レオン事務局長は、「原子力の扱いが180度転換した。(COP3の)京都議定書メカニズムから除外された唯一のテクノロジーが、ついにCOP28においてさまざまな枠組みに含まれることになった」と述べ、「今年、世界の原子力産業界がCOPでの存在感をさらに高めるべく、ネットゼロ原子力(NZN)イニシアチブを設立した。 今こそ、世界の原子力発電設備容量を急速に拡大すべき時だ」と強い意欲を示した。
英国原子力産業協会(NIA)のトム・グレイトレックスCEOは、コンセンサスに原子力が含まれたことを歓迎し、「これは気候変動との戦いにとって重要な瞬間だ」と述べた。そして「今必要なのは、英国が同盟国とともに重要な役割を果たし、原子力発電を大規模かつハイペースで拡大し、ネットゼロを達成すること」と指摘した。
日本原子力産業協会の新井史朗理事長は、「公式文書において原子力の低炭素価値が認められ明記されたのはCOP史上初めてであり大変意義深い」としたうえで、「NZNパビリオン、IAEAパビリオンを中心とした活動のほかに50にも及ぶ原子力関連サイドイベントが開催された。また、今回初めて、日本政府主催のジャパン・パビリオンで、原子力に係るパネル展示が実施されたほか、米国、カナダ、韓国、英国、仏国などの各国パビリオンでも積極的に原子力に関する展示やイベントが行われたことは大きな前進である」と強調した。
原子力産業新聞の独占インタビューに応じたOECD原子力機関(NEA)のウィリアム・マグウッド事務局長は、COP28について、「今回は原子力が話題の中心だった」と振り返り、「CO2排出量削減には原子力が大きな役割を果たすことが認められたということであり、ネットゼロ達成に必要な主要テクノロジーの中に原子力が初めてリスト入りした」との認識を示した。
次回のCOP29は、来年11月にアゼルバイジャンのバクーで開催される。