本特集「IT社会と原子力」では、膨大な計算処理を担うデータセンターと、それを支える高品質な電力供給の重要性を取り上げている。データセンターはビッグデータ解析や生成AIなど、私たちの生活を支える多様なデジタル技術の基盤であり、その安定稼働のためには、信頼性の高い、大量の電力が求められているのである。一方でいま、電力にもCO2削減、GX(グリーン・トランスフォーメーション)の観点が求められていることも忘れてはならない。そのために世界は、再生可能エネルギーだけでなく、原子力発電を選択しているのである。
では、なぜそこまで強力かつ安定した電力が必要なのか。ひとつのカギは、膨大なデータから新たな知見を引き出す「データマイニング」のプロセスにある。数多くの事例が示すように、データマイニングは企業の戦略立案や都市の安全対策、エンターテインメントの個別化に至るまで、私たちの生活に直接・間接を問わず大きく関わっている。本特集では、その象徴的な成功例を紹介する。
データマイニングと生成AIが生み出す価値を知ることは、データセンターで行われる膨大な演算の意味を理解する第一歩となる。そして、その大規模な演算環境を維持するエネルギー源として、原子力発電がどのような役割を果たすのか━━本特集では、そうした視点からIT社会と原子力の関わりを俯瞰し、未来のエネルギー供給の在り方を考察していく。