原子力産業新聞

IT社会と原子力

知らなかったことは、恥ずかしいことではない。知ろうとしないことは、恥ずべきことである。

本特集「IT社会と原子力」では、膨大な計算処理を担うデータセンターと、それを支える高品質な電力供給の重要性を取り上げている。データセンターはビッグデータ解析や生成AIなど、私たちの生活を支える多様なデジタル技術の基盤であり、その安定稼働のためには、信頼性の高い、大量の電力が求められているのである。一方でいま、電力にもCO2削減、GX(グリーン・トランスフォーメーション)の観点が求められていることも忘れてはならない。そのために世界は、再生可能エネルギーだけでなく、原子力発電を選択しているのである。

では、なぜそこまで強力かつ安定した電力が必要なのか。ひとつのカギは、膨大なデータから新たな知見を引き出す「データマイニング」のプロセスにある。数多くの事例が示すように、データマイニングは企業の戦略立案や都市の安全対策、エンターテインメントの個別化に至るまで、私たちの生活に直接・間接を問わず大きく関わっている。本特集では、その象徴的な成功例を紹介する。

データマイニングと生成AIが生み出す価値を知ることは、データセンターで行われる膨大な演算の意味を理解する第一歩となる。そして、その大規模な演算環境を維持するエネルギー源として、原子力発電がどのような役割を果たすのか━━本特集では、そうした視点からIT社会と原子力の関わりを俯瞰し、未来のエネルギー供給の在り方を考察していく。

米国の事例

米国は世界最大のIT大国であり、データセンター設置数は世界トップを誇る。Amazon、Google、Microsoftといった巨大IT企業が次々と新しい施設を設ける中、急速に進むデジタル化と生成AIの台頭により、データセンターの需要はますます拡大している。このようなデータセンターは24時間365日稼働を続け、大量の電力を必要とする。特に、近年の生成AIの急激な普及によってデータ処理量は飛躍的に増加し、電力消費も従来以上に大きな課題となっている。こうした状況下で、米国の電力インフラは限界に近づきつつあり、新たな安定的かつ持続可能な電力供給が不可欠となっている。そこで、大規模で安定的な電力源としての原子力発電が再び注目を集めることになった。米国のIT社会を支える電力インフラとして、原子力の活用をめぐる最新の事情や具体的な事例を紹介する。

  • 米国 ITメジャーと原子力をめぐる動き

これがデータセンターだ!

私たちが日常的に利用しているクラウドサービス、動画配信、オンラインストレージ、そして近年注目を集める生成AIの学習や推論など、あらゆる分野で膨大なデータがやり取りされている。こうした大容量データを処理・保存する施設こそがデータセンターである。データセンターとはサーバーやネットワーク機器を大量に収容し、大規模な情報処理を行う拠点を指す。企業のITインフラを支えるのみならず、政府機関や研究機関、さらにはAI関連の開発プロジェクトなど、多岐にわたる分野で欠かせない存在となっている。

  • データセンターとは? ━インターネットの裏側で支える巨大インフラ
  • 東芝製HDD データ爆発時代のバックボーンストレージを担う 徳島敬芳(とくしま・たかよし)さん 東芝デバイス&ストレージ株式会社 ストレージプロダクツ事業部 マネジャー
  • 電気を爆食しているのは データセンターではない 増永直大(ますなが・なおひろ)さん 日本データセンター協会 事務局長

データマイニングの世界

ビジネスの戦略から日常の行動パターンに至るまで、私たちの身のまわりには膨大なデータが蓄積されている。これらのデータには、まだ気づかれていない潜在的な価値や新たな洞察のヒントが数多く潜んでいる。その可能性を引き出す技術こそが、データマイニングである。

データマイニングは、大量の情報から意味のあるパターンや関係性を抽出し、新たな知見やイノベーションを生み出す手法である。近年では、医療や行政分野、エンターテインメントに至るまで、あらゆる分野で大きな成果を上げている。

なお、データマイニングはデータサイエンスの一分野として発展してきた。特定の問題解決や意思決定のために、データから価値を見つけ出す作業そのものを指す。一方、ビットコインなど暗号資産の「マイニング」は、暗号化された取引データを検証し、新しい取引データ(ブロック)をブロックチェーンに追加する作業であり、データマイニングとはまったく異なる概念である。しばしば、両者を混同しているケースを見かけるので、読者諸兄には注意していただきたい。

本セクションでは、データマイニングがもたらす多彩な成功事例を紹介する。それらを俯瞰しながら、データ活用の真価と可能性を探っていきたい。データがどのように価値へと変わるのか、そのプロセスを共に考えてみよう。

  • シカゴの奇跡 〜データが水を救う〜
  • 医療におけるデータマイニング 〜病気を未然に防ぐAI医師〜
  • Netflixのオススメ・アルゴリズム
  • エンターテイメントを変えたデータマイニングのインパクト

生成AIが来た!

生成AI(Generative AI)は、ここ数年で劇的な進化を遂げ、社会のあらゆる分野に変革をもたらしている。大規模言語モデル(LLM)の台頭により、対話型AIはより自然な文章生成を実現し、画像や動画の生成技術も飛躍的に向上した。医療、ビジネス、教育、クリエイティブ産業など、多岐にわたる分野での活用が進み、業務の効率化や新たな価値創出の可能性が広がっている。

  • 生成AIが来た!

知らなかったことは、恥ずかしいことではない。知ろうとしないことは、恥ずべきことである。

The series will continue.ツヅク

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