ラジオアイソトープ(RI)は、放射線を放出する同位体であり、核医学診療を支える基盤でもある。微量を体内に投与して病変部を映し出す診断や、がん細胞を選択的に殺傷する治療は、いずれもRIの特性によって可能となる。近年、アルファ線を放出する新たな治療用RIが登場し、従来は有効な手段が限られていた難治性がんへの適用が現実味を帯びてきた。
しかし、世界的に供給は限られ、需要の拡大とともに国際的な確保競争も激化している。安定的な製造基盤の整備、規制や社会的受容への対応は喫緊の課題だ。本特集では、RIの研究開発と社会実装の現状を、核医学の視点からシリーズで検証していく。
なお、RIという略称は、日本のみで使用されている用語であるので、注意してほしい。豆知識だがアカデミアでは、「radioisotopes」よりも「radionuclides」のワードの方が、多く利用されているようだ。