電事連・池辺会長が日本記者クラブで会見
18 Feb 2022
カーボンニュートラル実現に向けた全体像を示す電事連・池辺会長(日本記者クラブホームページより引用)
電気事業連合会の池辺和弘会長は2月16日、日本記者クラブで記者会見(オンライン)を行った。同クラブが「脱炭素社会」をテーマに昨秋より有識者を順次招き行っている会見シリーズの4回目で、同氏は、「2050年カーボンニュートラル」に向けた電気事業者の取組として、供給側の「電源の脱炭素化」、需要側の最大限の「電化の推進」について説明。エネルギー需給における「S+3E」(安全、安定供給、経済効率性、環境への適合)の同時達成の重要性を改めて強調した。〈電事連発表資料は こちら〉
冒頭、九州電力社長でもある池辺会長は、同社から東京まで約1,000kmの往復移動に要するエネルギーおよび発生するCO2に言及し、「このような形がスタンダードになるべき」と、オンラインを通じた会見を歓迎する意を表明した上で、エネルギー事業者として取り組む「電源の脱炭素化」と「電化の推進」との需給両面を2本柱とするカーボンニュートラル実現に向けた全体像を図示。
再生可能エネルギーについては、「主力電源化に向け最大限の導入を図る」と述べ、電力各社の開発・サービス事例を紹介する一方、「遠浅の海が少ない」、「平地面積が少ない」、「他国と系統がつながっておらず、安定性を維持するための系統コストが高くつく」といった大量導入に係る日本特有の地理的課題をあげた。実際、同氏が示した海外との比較データによると、洋上風力発電が設置可能な面積は英国の8分の1に過ぎず、また、太陽光設備では平地単位面積当たりの設置容量がドイツの約2倍、フランスの約16倍と、世界最高水準の過密となっている。こうした課題を踏まえ、「カーボンニュートラルを達成するためには、再エネと合わせて実用段階にある脱炭素電源の原子力を引き続き活用していくことが必要不可欠」なことを示唆した。
原子力については、足下の課題である再稼働に向けた新規制基準適合性審査の状況を図示。電事連内に2021年に設置した「再稼働加速タスクフォース」による業界挙げての(1)人的支援の拡大、(2)審査情報の共有、(3)技術支援――に取り組んでおり、これから再稼働を目指す電力に対し審査資料DVDの作成、発電所長クラス他総勢約500名が参加する説明会の開催などを実施しているという。将来に向けては、既設炉の安全性向上、原子燃料サイクルの推進、設備利用率の向上や長期サイクル運転とともに、「技術力・人材を国内で確保し続ける」観点から、新増設・リプレースが必要となるとした。最近の建設経験をみても、北海道電力泊3号機(2009年運転開始)、中国電力島根3号機(建設中、2009年に原子炉圧力容器据付け完了)から既に10年を経過しており、新規プラント建設までの空白期間が長期化することで、原子力産業基盤の維持が困難になりつつある状況だ。
火力については、「発電電力量の7割以上を占め、安定供給上、大変重要な役割を担っており、必要な規模を維持しながら脱炭素化を目指す」考えから、水素・アンモニア混焼、CCUS(CO2回収・有効利用・貯留)など、イノベーションの創造・実装に取り組んでいくとした。
また、需要側の脱炭素化のカギとして、ヒートポンプ技術導入によるCO2排出削減効果を披露。2050年度までに現状の国内CO2年間排出量の約1割に匹敵する約1.4億トンの削減が可能だと説明した。
記者から、原子力の関連で、新増設・リプレースの具体化や小型モジュール炉(SMR)導入の可能性について問われたの対し、池辺会長は、「まずは安全・安定運転の確保を通じた信頼獲得が一番の務め」と強調するなど、早期再稼働の実現が目下の課題であることを繰り返し述べた。この他、昨今の電力需給ひっ迫やウクライナ情勢の緊迫に鑑み、再生可能エネルギーへの急激な転換に伴うリスクやLNG調達の投資計画に関する質問も出され、池辺会長は、日本のエネルギー需給構造の脆弱さや価格高騰への危惧を示した上で、「選ばれるエネルギー源」となるよう電気事業者として努めていく考えを述べた。