原子力産業新聞

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「ATENAフォーラム」開催、規制機関と産業界の信頼関係をテーマに議論

24 Feb 2022

パネルディスカッションの模様

原子力の安全性向上に産業界が総力を挙げて取り組む組織「原子力エネルギー協議会」(ATENA)による「ATENAフォーラム2022」が2月17日、オンラインで開催された。今回は、「規制機関と原子力産業界の信頼関係の構築に向けて」をテーマにパネルディスカッション。

ATENA・魚住理事長

開会に際し挨拶に立ったATENAの魚住弘人理事長は、2018年7月の設立から3年半、ATENAが取り組んできた技術課題への対応実績を振り返った上で、安全性向上に向けた現在の重点項目として、(1)デジタル技術を始めとする新技術への対応、(2)自然現象への備え、(3)再稼働後の長期運転に向けた経年劣化管理――を列挙。今回フォーラムのテーマに関し、ATENAがミッションとする産業界を代表した規制当局との対話について、「対等で率直な議論を戦わせるにはまだ途半ば」と述べ有意義な議論に期待を寄せた。

原子力規制委員会・更田委員長

続いて、原子力規制委員会の更田豊志委員長が来賓挨拶(ビデオメッセージ)。同氏は、これまで審査に携わってきた経験を振り返り、自然現象やシビアアクシデントへの対応における不確かさ、事業者による投資判断の難しさから、リスク情報活用の有用性に触れ、幾つかの事例を通じ技術に関する正しい理解の重要性を説いた。また、「新しい技術開発を促すことも規制側の重要な役割の一つ」として、小型モジュール炉(SMR)の規制に係る国際動向への関心を表した上で、国内においても産業界が先行し議論が進むことを期待。規制委員会では事業者の経営トップらを招いた意見交換を順次行っているが、「規制機関と産業界との信頼関係はそれぞれに対する社会の信頼があって初めて構築できるもの」と、フォーラム開催の意義を強調した。

パネルディスカッションには、「Kマトリックス」代表の近藤寛子氏(モデレータ)、中部電力原子力本部長の伊原一郎氏、慶應義塾大学グローバルリサーチインスティテュート特任教授の遠藤典子氏、原子力規制庁原子力規制企画課長の大島俊之氏、PHP総研主席研究員の亀井善太郎氏、OECD/NEA事務局長のウィリアム・マグウッド氏、読売新聞論説委員の山田哲朗氏、ATENA理事の酒井修氏が登壇。

OECD/NEA・マグウッド事務局長

議論に先立ち基調講演(ビデオメッセージ)を行ったマグウッド氏はまず、2021年のCOP26を振り返り、「原子力が世界的に大きな役割を果たさない限り、気候変動対策の目標を達成することは非常に難しい」と強調。新しい原子力技術の活用を期待し、その導入に向けて、規制当局、産業界、一般市民との信頼関係は「極めて重要なトライアングルだ」とするとともに、「規制当局は産業界が進歩するための障害ではなく、解決策の一部でなければならない」とも述べ、OECD/NEAが取り組む放射性廃棄物処分に係る対話活動の実績の他、航空機産業における良好事例についても紹介し議論に先鞭をつけた。

これを受け、電気事業者としてATENA設立にも関わった伊原氏は、技術に通じたプラントメーカーも含むという電気事業連合会とは異なる存在意義を述べた上で、「成果を出し、まず世の中に認めてもらうことが信頼関係の構築につながる」と強調。規制の立場から大島氏は、「それぞれのメンバーがどのように活動し、外から透明性をもって見られているのか。批判的な声も聴き入れ、議論が外に向かって発信されているのか」と指摘。安全性向上に関する規制委員会の検討チームに参画した亀井氏は「組織を背負った対話」の難しさからアカデミアが果たすべき役割に言及し、また、メディアの立場から山田氏は国民のリテラシー向上の重要性などを訴えた。エネルギー政策について研究する遠藤氏は審査期間の長期化から生じる経済への影響を課題としてあげ、国会の関与にも期待。酒井氏は、「技術論をしっかり戦わすことが求められている」と、ATENAが産業界を率いて総合力を発揮させるよう意欲を示した。

※写真は、いずれもオンライン中継より撮影。

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