経団連、「2050年カーボンニュートラル」の実現に向け提言発表
28 Apr 2022
原子力発電の設備容量見通し(万kW、経団連発表資料より引用)
日本経済団体連合会は4月26日、「2050年カーボンニュートラル」実現に向けた提言を発表した。「国を挙げて『経済と環境の好循環』を創出しながら、経済社会全体の変革『グリーン・トランスフォーメーション(GX)』を推進する必要がある」との考えのもと、(1)イノベーション、(2)トランジション(技術の社会実装に至る過程での円滑な移行)、(3)投資の促進、(4)産業競争力の強化――の4つの視点を掲げ、政府に対しグランドデザイン「GX政策パッケージ」の策定を求めている。
昨秋発足した岸田内閣は、「2050年カーボンニュートラル」の実現に向け、温暖化対策を成長につなげる「クリーンエネルギー戦略」の策定・推進を標榜。経済産業省では、産業構造審議会のもとに「GX推進小委員会」を置き、総合資源エネルギー調査会との合同会合を2021年12月に始動し、同戦略の策定に向けた検討を進めており、これまで7回の会合で、関係省庁、産業界、シンクタンクよりヒアリングを実施した。今回の経団連による提言は、こうしたGXを巡る動きに対応したものといえる。経団連の十倉雅和氏会長は、提言の序文の中で、「昨今のエネルギー資源価格の高騰や足元のロシア・ウクライナ情勢など、GXを取り巻く国内外の環境は、日々、大きく変化している」と述べ、提言内容の不断の見直しを図っていくとしている。
「GX政策パッケージ」については、まず社会実装が必要な技術・投資額・政策に関するロードマップの明示、省庁横断的な司令塔「GX実現会議」の創設を要望。その上で、エネルギー供給構造の転換、原子力利用の積極的推進、電化の推進・エネルギー需要側を中心とした革新的技術の開発など、推進すべき8項目の諸施策をあげている。
原子力については、既存プラントの運転期間を60年に延長しても、2040年以降に設備容量が著しく縮小し、2050年段階では原子力比率20%(2030年のエネルギー需給見通しでは約20~22%)に遠く及ばないとのデータを図示。60年超運転の検討、安全性が向上した革新軽水炉に加え、小型モジュール炉(SMR)や水素製造に活用できる高温ガス炉などを念頭に、政府として新たなプラントの建設方針を示すべきとしている。
また、火力発電の脱炭素化については、2030年度に向けてLNGなどの低炭素燃料への転換を進めるとともに、「S+3E」(安全性、エネルギー安全保障・安定供給、経済効率性、環境適合性)を大前提に非効率火力発電プラントの廃止を進め依存度を低減。「2050年カーボンニュートラル」を見据え、脱炭素火力の社会実装を図るべく水素・アンモニアの専焼、CCUS(CO2回収・有効利用・貯留)活用に係るイノベーション創出に取り組むとしている。
今回の提言では、「GX政策パッケージ」を実行し「2050年カーボンニュートラル」が実現した際の経済の姿も展望。2050年度の実質GDPは2019年度比で91.0%増加し、1,026.8兆円となるとの試算を示している。