電事連・池辺会長、所得の海外流出を懸念し原子力の必要性を強調
23 May 2022
電気事業連合会の池辺和弘会長は5月20日の定例記者会見で、昨今のウクライナ情勢や電力需給ひっ迫を踏まえ、「中長期的な供給力の確保の重要性と原子力の必要性」について述べた。〈発表資料は こちら〉
池辺会長は、2021年来の世界的な化石燃料の需給ひっ迫、価格高騰の継続を省み、「2年ぶり、かつ5兆円を超える巨額の貿易赤字となった」との報道や、「石油・石炭・天然ガスなどの輸入額が2020年度と比較して87%増加、金額にして9兆円以上増加し、日本の貿易赤字を拡大させる大きな要因」とする貿易統計に基づく分析を示し、「国民一人当たり7万円以上に相当する規模」と、所得の海外流出を懸念。その上で、「燃料費の割合が低い原子力発電は、非常に大きな役割を果たすものと考えている。エネルギーの安全保障や経済性の確保、さらには『2050年カーボンニュートラル』の実現という『S+3E』の観点からも、今ある原子力を、安全最優先で最大限活用していくことが不可欠」と強調した。
池辺会長は、「不確実性に備えた供給力の確保」についても説明。既設電源の維持や新規電源の建設に資する事業環境の整備を喫緊の課題として掲げた。
2022年度夏季の電力需給は、東北・東京・中部エリアで7月の予備率が安定供給に最低限必要な3%を辛うじて上回る3.1%に、冬季は、東京から中部までの7エリアで予備率3%を下回り、特に東京エリアでは予備率がマイナスとなる非常に厳しい見通しだ。資源エネルギー庁では、
- 火力の休廃止増加や福島沖地震の影響による供給力の不足
- コロナ禍により経済社会構造が変化する中での電力需要の増加
- ウクライナ情勢により不確実性が高まる燃料調達リスク
――を方向性に据え、今後の電力需給対策を近く取りまとめることとなっている。