原子力産業新聞

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全原協「エネ基の早急な見直しを」 原子力委ヒア

04 Aug 2022

原子力委員会ヒアの模様(左より、全原協・栁澤副会長、同渕上会長、原子力委員会・岡田委員、同上坂委員長、同佐野委員)

全国原子力発電所所在市町村協議会(全原協)の渕上隆信会長(敦賀市長)と栁澤重夫副会長(御前崎市長)は8月2日、原子力委員会の定例会合に招かれ、立地自治体の立場から原子力政策に対する意見を述べた。同委が1月より公開の場で随時行っている「原子力利用に関する基本的考え方」の改定検討に向けたヒアリングの一環。全原協は、原子力発電所の立地によって生じる諸問題を結束して解決し住民の安全確保と地域発展を目指すことを目的として1968年に発足。現在、周辺自治体や核燃料サイクル施設の立地自治体なども含め国内28市町村が会員となっている。

渕上会長は、国際的な脱炭素化の潮流、昨今のウクライナ情勢に伴う資源価格の高騰、電力需給ひっ迫など、原子力政策を巡る現状を述べた上で、「エネルギー政策はわが国の行く末を左右する最重要政策だ。資源を持たない日本が貿易立国として国際競争力を高め生き残っていくため、原子力発電を選択した当時を思い出してもらいたい」と強調。さらに、「今般の日本の厳しいエネルギー事情を鑑みれば、低廉で安定した電力供給を果たすため、原子力発電は欠くことができない」とも述べ、昨秋策定されたエネルギー基本計画策定に関し、昨今の著しい情勢変化から、「法令に定める3年ごとの期限を待たず早急に見直しを行うべき」と主張した。また、原子力発電に関する世論調査の経年変化を踏まえ、「特に電力消費地における理解はまだ十分とはいえない」と指摘。原子力人材確保の課題にも触れた上、「現実的で力強いエネルギー政策、原子力政策を明確に示すことが国の責務」と訴えた。〈発表資料は こちら

栁澤副会長は、御前崎市内に立地する中部電力浜岡原子力発電所3、4号機に係る新規制基準適合性審査が長期化していることに関し、

  1. 市民の安全に対する不安
  2. 市政運営や市内経済への影響
  3. 浜岡3号機は2027年で法令で定める運転開始40年に到達(このまま運転期間延長も含め、審査が進まなければ実質23年の運転で廃炉)
  4. 現場技術力の低下

――との課題を指摘。市民からの「地震や津波に対する中部電力の想定が甘いのでは」、「国は再稼働させないようとしているのではないか」といった不安の声が上がっていることや、原子力防災に関する課題にも触れた上で、長期的視点に立った原子力政策が図られる必要性を訴えた。〈発表資料は こちら

委員との間では、高レベル放射性廃棄物の処分地選定、将来のエネルギー安全保障確保や人材育成に関し意見交換。渕上会長は、国民理解の促進に向けて、「教科書への掲載が一般の理解につながる」としたほか、漫画やYou Tubeなどの活用を提案。上坂充委員長は、先般刊行した原子力白書について「大学の講義でも使えるよう編集した」としたほか、世代間倫理の課題にも言及しながら、初等中等教育段階からの理解促進に関しても、学会などの知見を活用し取り組んでいく考えを示した。

全原協の渕上会長らは、6月30日開催の総合資源エネルギー調査会原子力小委員会でも同様の意見陳述を行っているほか、7月26日には経済産業省を訪れ、萩生田光一大臣、細田健一副大臣と会談し、「原子力発電等に関する要請書」を提出している。同要請書は、3年ぶりの対面開催として5月に行われた同協会の定例総会で、会員市町村からの意見も踏まえ採択された。

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