総合エネ調基本政策分科会が原子力政策について議論
16 Nov 2022
総合資源エネルギー調査会の基本政策分科会(分科会長=白石隆・熊本県立大学理事長)は11月15日、原子力政策について議論した。〈配布資料は こちら〉
8月の「GX(グリーントランスフォーメーション)実行会議」で西村康稔経済産業相が報告した「日本のエネルギーの安定供給の再構築」を受け、同分科会は9月にエネルギー供給体制の見直しに向け検討を開始。15日の会合では、資源エネルギー庁が同調査会下の原子力小委員会における検討状況を、
- 再稼働への関係者の総力結集
- 運転期間延長など、既設原子力発電所の最大限活用
- 次世代革新炉の開発・建設
- 再処理・廃炉・最終処分のプロセス加速化
- 国際連携の推進
――の論点ごとに整理し説明。これに対し、日本原子力研究開発機構理事の大島宏之氏、大学院大学至善館の枝廣淳子氏、朝日新聞論説委員の五郎丸健一氏、原子力資料情報室事務局長の松久保肇氏(原子力小委員会委員)よりヒアリングを行った。
大島氏は、原子力機構が取り組む高温ガス炉、高速炉の研究開発状況を紹介。バックエンド対策、非エネルギー分野における展望、人材育成・技術継承の課題にも触れ、次世代革新炉の実用化に向けて、計画の具体化、安全規制・基準の構築、事業の予見性確保、国の支援施策の重要性を訴えた。エネルギー政策の検討に関し討論型世論調査(2012年)や2050年を見据えたエネルギー情勢懇談会(2017~18年)に参画した経緯を持つ枝廣氏は、まず「福島原発事故がなかったかのようにエネルギー政策を考えてはならない」と強調。立地地域での対話活動の経験にも触れ、一方的な情報提供ではなく平時から双方向コミュニケーションに努める必要性を訴えた。
運転期間延長や次世代革新炉の開発・建設の動きに関連し、五郎丸氏は、現行のエネルギー基本計画が掲げる「可能な限り原発依存度を低減」との整合性を問い、「『つまみ食い』的に方針を転換するのではなく、基本計画の見直しも合わせて議論すべき」と主張。高レベル放射性廃棄物最終処分や核燃料サイクルの事業停滞を憂慮するとともに、再稼働に係る地元同意の範囲や避難計画・体制の実効性を「不十分」などと指摘した上で、「結論ありき、スケジュールありき」の拙速な議論に危惧を示した。
ヒアリングを受け、委員の杉本達治氏(福井県知事)は、「立地地域としては安全が最優先」と述べ、事業者が安全対策に十分な投資を図れる制度設計を合わせて検討していくべきと要望。また、これまでも原子力技術開発の必要性を訴え続けてきた隅修三氏(東京海上日動火災保険相談役)は、再生可能エネルギーが持つポテンシャルの限界から、「2050年カーボンニュートラル」の実現に向け、「もう時間がない」と述べ、原子力機構が示した次世代革新炉開発に係る技術ロードマップの前倒しなどを求めた。原子力小委員会の委員長を務める山口彰氏(原子力安全研究協会理事)は、今後の議論に向け、「様々な問題が絡み合った連立方程式を解くようなもの。原子力ワンイシューの中で二者択一的に対立するのではなく、様々な論点を合わせて解を求めていくべき」と述べた。