福島大・川﨑教授 「国民全体で福島復興に関する総合的検証を」
12 Dec 2022
福島第一原子力発電所事故から10余年が経過。福島大学共生システム理工学類の川﨑興太教授は、12月7日に行われた同学・三浦浩喜学長による定例記者会見の中で、「国民全体での福島復興に関する総合的な検証が必要」と指摘している。〈福島大発表資料は こちら〉
同氏は、2018年に学際的研究会「福島長期復興政策研究会」を設立。2021年までに、事故発生から10年間における福島の復興および関連政策の検証、および今後の調査・研究の一環として、福島県内の12市町村(田村市、南相馬市、川俣町、広野町、楢葉町、富岡町、川内村、大熊町、双葉町、浪江町、葛尾村、飯舘村)の首長を対象にヒアリングを実施し、復興に向けた課題を抽出。同調査・研究の成果は今秋、「福島復興の到達点―原子力災害からの復興に関する10年後の記録―」(東信堂)として出版された。
会見で川﨑教授は、その内容について紹介。「福島復興10年間の到達点」に関し、避難指示は2020年3月までに帰還困難区域を除きすべて解除されたものの、
- 多くの住民は避難し続けており、自治体は存続の危機に陥っている
- 除染が完了しても、放射能汚染問題がすべて解消したわけではない
- 福島の基幹産業である農林水産業は、それぞれ文脈は異なるものの、いずれも苦境に立たされ続けている
- そもそも事故が収束していない
- 県や自治体は新たな復興計画を策定し、未来を切り拓こうとしているが、解決すべき課題が山積している
――との段階にあると指摘している。
さらに、同氏は、福島第一原子力発電所事故やその後の復興について、「日本全体、世界全体の問題であるにもかかわらず、いつのまにか福島に閉じられたローカルな問題に矮小化されている」と懸念。総合的な検証の必要性を示し、その視点として、
- 事故発生の原因究明と責任所在の解明
- 被害実態の包括的・総体的な把握と追求
- 被災者の生活再建と被災地の復興・再生に関する実態に即した課題の抽出
- 事故の再発防止策と再発した場合の被害最小化策の合理性
――を提示。「福島の問題を考えることは、本質的には国民一人一人の暮らしのあり方そのものを見つめ直すことでもある」との考えから、検証は、福島の住民、県・市町村、国、東京電力だけでなく、国民全体で行うべきと提言している。