原子力産業新聞

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文科省作業部会 研究炉を取り巻く環境に警鐘

16 Dec 2022

国内試験研究炉は高経年化などに伴い、近年廃止措置への移行が顕著となっている(文科省発表資料より引用)

文部科学省の原子力研究開発・基盤・人材作業部会(主査=寺井隆幸・東京大学名誉教授)は12月13日、中間まとめ「わが国の試験研究炉を取り巻く現状・課題と今後の取組の方向性について」を概ね了承した。同作業部会では、わが国の原子力人材育成・研究開発を支える観点から、国内試験研究炉の重要性を取り上げ、日本原子力研究開発機構より、「もんじゅ」サイトにおける新たな試験研究炉の設計活動、廃止が決定した材料試験炉「JMTR」についてヒアリングを行うなど、検討を進めてきた。

中間まとめでは、国内試験研究炉の多くが廃止措置に移行してきた背景要因として、

  1. 建設から長期を経た施設の老朽化・高経年化
  2. 所期の目的を(一定程度あるいはすべて)達成したこと
  3. 新しい炉に機能を集約した結果としての合理化
  4. 新規制基準への適合に必要な対策工事に係るコスト等を勘案したときの費用対効果

――を列挙。東日本大震災以降の運転再開の動きに触れつつも、「わが国の原子力産業や関連の学術研究を支える基盤の脆弱化とともに、人材や技術の継承が大きな危機に直面している」と、警鐘を鳴らしている。

「もんじゅ」サイトに計画される新たな試験研究炉のイメージ(文科省発表資料より引用)

その上で、これまで試験研究炉に係る多くの知見・技術を蓄積してきた原子力機構の役割に改めて期待。現在、「もんじゅ」サイトに設置する新たな試験研究炉の概念設計・運営に向け、中核的機関として、原子力機構(試験研究炉の設計・設置・運転)、京都大学(幅広い利用運営)、福井大学(地元関係機関との連携構築)が選定され、原子力機構を中心に、利用ニーズを有する大学、産業界、地元企業などからなるコンソーシアム委員会を組織し検討が進められている。これに関し、今回の中間まとめでは、「2026年の京都大学試験研究炉『KUR』の運転停止・廃止措置移行後、研究開発・人材育成基盤となることへの期待は高く、さらに立地地域との共創により、長期的な利用基盤形成を図っていくことで、新たな試験研究炉が新しい社会的価値を発現するモデルとなる」と評価。今後、建設予定地の確定に向けた地質調査など、必要な取組を着実に進めていくよう求めている。新たな試験研究炉については、中性子ビーム利用を主目的とした汎用性の高い中出力炉(熱出力10MW未満程度)に絞り込んだ上で、年度内の詳細設計段階への移行を目指しており、既設の研究炉「JRR-3」や大強度陽子加速器施設「J-PARC」との相乗効果も期待されている。

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