「ATENAフォーラム2023」開催
21 Feb 2023
原子力エネルギー協議会(ATENA)は2月16日、「ATENAフォーラム2023」を都内ホールで(オンライン併用)開催した。
ATENAは2018年7月、電力会社に加えメーカーなども含む産業界全体で原子力の自主的安全性向上を図る組織として発足。知見・リソースを効果的に活用しながら、原子力発電の安全性に関する共通的な技術課題に取り組んでいる。ATENAの取組について発信するフォーラムの開催は今回で5回目となる。
来賓挨拶に立った原子力規制委員会の山中伸介委員長は、ATENAの取組に関し「個別事業者としては言い得ないような意見を拾い上げ、原子力規制委員会・規制庁に対する異論・反論も含めた事業者の意見・提言の発信がより強く期待できる」と、その意義を強調。一例として、事故耐性燃料の導入に向けた事業者との技術的議論の進展などに言及した上で、今後も原子力発電所の長期サイクル運転におけるリスク情報の活用など、技術課題に係る様々な提案が寄せられるよう、ATENAのリーダーシップ発揮に期待した。また、昨今の原子力施設におけるトラブル多発を背景に、「技術力・現場力の低下が生じているのではないか。大学などにおいても原子力を学ぶ学生数が減少し、実験装置を自ら作成するという体験が少なくなっている」として、将来の原子力人材育成に向け真剣に考えるべきと明言。ATENAに対し、「メーカーも含む」という強みに触れ、「これまでの発想とはまったく異なった若手人材の育成に取り組んで欲しい」と述べた。
続いて基調講演(ビデオメッセージ)を行ったM.コースニック米国原子力エネルギー協会(NEI)理事長兼CEOはまず、昨今の世界的なエネルギー危機・政情不安に言及。その上で、「各国の指導者たちは今、気候危機への対応が自国の経済やエネルギー安全保障に直結していることを認識している。その多くは、出力の大規模化が容易で信頼性が高く、安価でクリーンなエネルギー源として原子力を推進する明確な政策を打ち出している」と述べ、英国、フランス、カナダ、ポーランド、オランダ、ブルガリア、チェコにおける最近の原子力開発に向けた動きを紹介した。同氏は、米国の原子力推進に係る法案提出状況にも触れ、「10年前は州レベルで12本もあれば良い方だったが、最近では100本以上にも上っている」と、関心の高まりを強調。運転期間の見直しや次世代革新炉の開発・建設など、日本の原子力政策の動きに関しては、「強固なサプライチェーンと経験豊富な人材が必要」と指摘するとともに、「『今こそ原子力に全力投球すべき』ことは明らか」と述べ、NEIとATENAとのパートナーシップを強めていく姿勢を示した。
パネルディスカッションでは、山口彰氏(原子力安全研究協会理事、モデレーター)、ジョージ・アポストラキス氏(電力中央研究所原子力リスク研究センター所長)、金城慎司氏(原子力規制庁原子力規制企画課長)、水田仁氏(関西電力原子力事業本部長代理)、山本章夫氏(名古屋大学工学部教授)、富岡義博氏(ATENA理事)が登壇。安全性と経済性の両立を巡るリスクコミュニケーションツールの活用、産業界と規制当局との対話などをテーマに意見が交わされた。
※写真は、いずれもオンライン中継より撮影。