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「12年間のプラント停止は非常識」エネ研が原子力規制でシンポ

24 Feb 2023

NEAのマグウッド事務局長

日本エネルギー経済研究所(エネ研)は2月21日、都内のホテルで、「原子力規制のベストプラクティス」をテーマにシンポジウムを開催「原子力規制のベストプラクティス」をテーマにシンポジウムを開催。OECD原子力機関(NEA)のW.マグウッド事務局長をはじめ、カナダ、英国の原子力規制専門家が登壇し、「合理的な規制」のあるべき姿について議論した。シンポジウムは対面式で開催され、多くの関係者が詰めかけた。

マグウッド氏は、世界規模で原子力発電の新規導入が検討されている中で、最も重要なことは「スキルを備えた力強い規制当局」の存在だと強調。世界の規制分野で、優秀な規制人材の確保が課題となっていると述べた。そして規制当局の意思決定に関しては、透明性を持ちつつ “誰が見てもわかる明確な原則” を示すことで、信頼を得ることができるとし、規制者側にも「自らに対しても批判的である」よう求めた。

また福島第一事故以降、日本の規制当局がとってきた対応を「緊急性の高い危機対応であり、妥当」と一定の評価をしつつも、「もはや危機は脱した」として、これまでの規制対応などのアプローチ自体を「見直す時期に来ている」と指摘。規制当局にはイノベーションを受け入れる姿勢が大切だとした上で、AI等の最新手法を貪欲に取り入れ、“reasonable(合理的)” かつ実用的な安全性向上へ取り組むべきだと訴えた。そして私見としながらも、規制当局の意思決定は、将来に渡ってリピートされる模範例となることが大事だとし、規制当局のグローバル規模での連携により、より良い規制が生まれるのではないかと、規制当局間のコミュニケーション強化を呼びかけた。

CNSCの上席副長官兼最高規制業務責任者を務めるジャマル氏

カナダ原子力安全委員会(CNSC)や米原子力規制委員会(U.S.NRC)の委員を歴任したR.ジャマル氏は、カナダでの規制事例を紹介。その規制手法は柔軟であり、常に原子力安全規制分野の変化に対応できるよう心掛けているとした。そして規制にあたって最も重要視すべきこととして、「合理的でないリスク防止策」を除外することを挙げた。これは、原子炉を停止してしまえば簡単にリスクは防止できるが、そうした安易な手法は取らず、さまざまなリスク情報を分析した上で対応するということで、こうした姿勢も、規制当局にそれだけの力量があってはじめて可能になると強調した。

英国のR.キャンベル氏は、英原子力規制庁(ONR)等で30年以上のキャリアを積んだベテラン。今回が初来日となった。同氏は規制において「タイムスケールの透明性」が不可欠だと指摘。申請から認可までいかに迅速に結論を出せるかがカギであり、「法律や規則で決まっているものではないが、規制当局としてのサービスの一環として示す必要がある」と強調した。また、事業者と規制当局は常に対話を継続するべきだとした上で、規制当局は「外部からどのように見られているかを常に意識しなければならない」との認識を示した。

モデレーターを務めたエネ研の村上朋子・研究主幹が質疑の中で、「規制プロセスとプラント利用率向上のバランス」について問い掛けたところ、3者とも「設備利用率は事業者の管轄であり、規制当局は関知しない」と断言。また「規制当局は電力供給の安定性も考慮すべきなのでは?」との会場からの声に対し、これも3者とも「規制当局は電力の供給に責任を持つものではない」との考えで一致した。ただし、「優れた規制当局は、どこで何が起きているかを把握しなければならない。場合によっては規制当局は、状況を踏まえて意思決定を行なうこともある。必ずしもプラントを今すぐ止めなければならない問題でなければ、当局も相応の対応が取れるはずだ」(マグウッド氏)、「国民のwell-being(幸福)のためという目標を忘れてはならず、graded approach(リスクに見合った規制)を適用すべきだ」(ジャマル氏)──等のコメントがあった。

昨年ONRを退任したばかりのキャンベル氏

一方、「合理的な規制とは?」との問いに関しては、マグウッド氏とジャマル氏が「安全目標に照らし合わせ、それを十分に達成した状態でプラントが稼働することが基本」と、バランスを取りながら合理性を判断するとしたのに対し、キャンベル氏は「合理性とは、余計なコストをかけないこと」と即答。規制当局としてはリスクが十分に低ければ、合理性の観点から十分にacceptable(受容可能)であり、わずかなリスクを下げるために過大なコストを投じることは馬鹿げていると指摘した。

キャンベル氏は日本のプラントが置かれた状況にも言及。「再稼働を目指すというが、12年間の停止期間は非常識。これは全てイチからやり直すようなもので、人材が足りないだけでなく、数多くのトラブルが起きることが目に見えている。規制当局を納得させることは難しいだろう」と指摘した。その上で、そこまでして旧いプラントを再稼働させるよりも「最新知見を結集した新型炉にリプレースする方が、明らかに合理的」との考えを明らかにした。

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