OECD/NEAのジェンダーバランス調査で岡田原子力委員が提言
24 Mar 2023
原子力委員会の岡田往子委員は3月22日、同委定例会で、OECD/NEA(経済協力開発機構/原子力機関)が原子力分野におけるジェンダーバランスの現状把握のため実施し、8日に公表したアンケート調査の結果について説明した。OECD/NEAのタスクグループが加盟国を対象に実施したもので、17か国に対し行われた定量的調査と、32か国に対し行われた定性的調査からなり、今後のジェンダーバランス改善に向けた政策立案に資する「国際的に初めて公開されたデータ」とみられる。〈原子力委員会・岡田委員発表資料は こちら〉
岡田委員はまず、ジェンダーバランスに関し、「男女の賃金格差、昇進格差をなくし、男女の採用の公平性を高めること」とする(一社)パートナーシップ協会による定義を紹介した上で、「誰もが働きやすい社会の実現に向け、ジェンダーの平等は必須」と強調。さらに、過去にノーベル賞を受賞した科学者の男女比について、生理学・医学賞は225名対12名、化学賞は191名対8名、物理学賞は222名対4名と調べ上げ、「女性は非常に少ない」と、科学技術分野での功績者実績にもジェンダーバランスの格差がみられることに問題意識を示した。
OECD/NEAによる定量的アンケート調査で、日本からは、日本原子力研究開発機構、量子科学技術研究開発機構、原子力規制庁が協力。調査結果によると、原子力分野での全労働者に占める女性の比率は、調査対象国の平均24.9%(ロシアはサンプル数が多いため除外、以下同様)に対し、日本は15.4%で、調査対象国の中で最低となり、岡田委員は「日本では、原子力分野への女性の進出が遅れていることは明確」と指摘した。新入職員全体に占める女性の割合は、調査対象国の平均28.8%に対し、日本は27.0%で、ほぼ世界平均の水準だった。
一方、キャリアパスに関して、女性昇進者の全体に占める割合は、調査対象国の平均27.1%に対し、日本は14.0%で、調査対象国の中で最低であった。さらに、賃金格差(男性の給与に対する女性の給与の割合)については、調査対象国の平均マイナス5.2%に対し、日本はマイナス26.4%で「韓国と並び女性の給与が男性に比べ極端に低い」結果となり、「女性が上級管理職ポストに就く割合が極端に低いことがその一因」と分析されている。
職場風土・環境、家庭への影響、男女間の不平等などに関する定性的アンケート調査の結果からは、「原子力特有の問題が、より広範な社会文化的課題と相互作用して、女性の貢献を制限している」との課題が抽出された。これらを踏まえ、岡田委員は、原子力分野におけるジェンダーバランスの改善に向け、
- 今、働いている女性の活躍の場を広げる
- 今、働いている女性の活躍を発信する
- 将来世代の女性たちに可能性を示す
- 将来世代の女性たちに夢を与える
- 原子力分野の足りないもの、わかっていないこと、やらなければならないことを明確にする
――ことを提言。今後の具体的進め方として、アカデミアとも連携したロールモデル集の開発、WiN(Women in Nuclear:原子力・放射線利用の分野で働く女性による国際NGO)への支援などをあげた。
これを受け、佐野利男委員は、定量的データをより精緻化していく必要性を指摘したほか、原子力以外の分野とも連携した取組や、LGBTQ[1]性的少数者とされるレズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー、クイア他に対する支援にも言及。上坂充委員長は、原子力委員会が重点的取組として掲げる医療用RI製造・利用などの核医学分野や、社会学・コミュニケーション分野で、今後、女性が活躍することに期待を寄せた。
脚注
↑1 | 性的少数者とされるレズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー、クイア他 |
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