原子力産業新聞

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核融合の産業化を見据え「イノベーション戦略」決定

14 Apr 2023

会見を行う高市大臣(内閣府ホームページより引用)

政府の統合イノベーション戦略推進会議は4月14日、核融合エネルギーを新たな産業と捉え実用化に向け加速化を図る「フュージョン・イノベーション戦略」を決定した。

同戦略では、核融合エネルギーについて、カーボンニュートラル、豊富な燃料、固有の安全性、環境保全性の特長をあげ、「エネルギー問題と地球環境問題を同時に解決する」と強調。欧米エネルギー分野での一般的呼称を踏まえ、「フュージョンエネルギー」と表現。今後10年を見据え、「技術的優位性を活かして市場の勝ち筋をつかむ“フュージョンエネルギーの産業化”をビジョンに掲げる」としている。

核融合エネルギーの実現に向けては現在、国際プロジェクト「ITER計画」が進められており、日本も超伝導トロイダル磁場コイルの物納などを通じ同プロジェクトに貢献しているが、今回の「フュージョン・イノベーション戦略」では、今後の建設進展に伴う調達減少で需給縮小・空白期間が生じることを懸念。その上で、発電実証を行う原型炉開発への民間企業参画を見据え「フュージョンインダストリーの育成戦略」を提唱した。そこでは、「見える」、「繋がる」、「育てる」を3本柱に、現在、文部科学省の作業部会・ワーキンググループが2050年頃としている発電実証時期を「できるだけ早く明確化する」ことや、他分野技術とのマッチングの場となる「一般社団法人核融合産業協議会」(仮称、既存の核融合エネルギーフォーラムを発展的改組)の年度内設立、安全規制に関する議論、イノベーションを創出する振興技術の支援強化、教育プログラムの展開などを盛り込んでいる。

統合イノベーション戦略推進会議を所管する高市早苗・内閣府科学技術政策担当相は、同日の閣議後記者会見で、「政府における司令塔を担う立場から、関係省庁と一丸となって様々な政策手段を総動員し、産学官が連携することによって着実に戦略を実行できるよう取り組んでいく」と、強い意欲を示した。

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