原子力産業新聞

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G7札幌コミュニケ SMRの導入拡大などを盛り込む

17 Apr 2023

先進7か国(G7)の気候・エネルギー・環境相会合が4月15、16日の2日間、札幌市で開催され、コミュニケ(閣僚共同声明)を採択して閉幕した。コミュニケは終盤で原子力発電に言及。7か国のうち5か国(日本、米国、英国、フランス、カナダ)限定[1]脱原子力政策を採るドイツとイタリアの2か国を除いているながらも、「(原子力は、)気候変動による危機的状況に対処しつつ、エネルギー・セキュリティを確保できる安価かつ低炭素なエネルギー」との認識が示された。

原子力についてはさらに、現在のエネルギー危機への対応として、既存の原子力発電所の長期運転の重要性を指摘したほか、小型モジュール炉(SMR)など革新炉に言及。最高水準の原子力安全および核セキュリティを担保しつつ、SMRの導入拡大のために、途上国向けの規制体系ならびに資金調達のスキームを整備するとした。

G7はコミュニケの冒頭で、ロシアによるウクライナへの侵略戦争について「不法、不当、かつ正当性がなく、国連憲章違反」と強く非難。エネルギーや食料を武器として利用するロシアがもたらした世界規模のインフレ、エネルギー危機、食糧危機などの影響を憂慮するとともに、ウクライナへのクリーンなエネルギーインフラの構築に対する支援を表明しており、原子力分野でも「ロシア依存の低減」を明言。ロシア製機器やロシア産燃料への依存度を減少させ、供給源を多様化させるべく、強固で強靭な原子力サプライチェーンを構築することも謳っている。

このほかコミュニケでは、福島第一原子力発電所の廃炉作業の着実な進展について「歓迎する」と表明した。その上で、ALPS処理水の海洋放出についても、国際原子力機関(IAEA)のレビュー結果を「支持する」と強調。海洋放出がIAEAの定める安全基準や国際法に則って実施されるのであれば、問題はないとの認識を示した。

石炭火力発電については、英国などが求めていた廃止時期の明示は見送られた。これに代わり、CO2回収・貯留(CCS)などの対策を講じていない石炭や天然ガスなどの化石燃料の利用については、段階的に削減していくことで合意した。昨年5月にとりまとめられたコミュニケでは、CO2排出量の削減対策が取られていない場合、石炭の使用を段階的に削減するとしていたが、今回会合では、対象を化石燃料全体に広げることで、G7として2050年のCO2排出量ゼロに向けて本腰を入れる姿勢を強めた形だ。

脚注

脚注
1 脱原子力政策を採るドイツとイタリアの2か国を除いている

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