原子力産業新聞

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原子力関連法案が衆院経済産業委で可決

26 Apr 2023

26日の経済産業委員会で答弁に立つ岸田首相

衆議院で審議中の「脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律案」が4月26日、付託された経済産業委員会(竹内譲委員長〈公明党〉)で、賛成多数により可決された。同法案に対しては、自由民主党など、4派が共同で修正案を提出。原子力基本法に新たに規定された「国の責務」のうち、国民の信頼確保・理解獲得に関して、立地地域だけでなく「電力の大消費地である都市の住民」が追加されたほか、原子炉等規制法関連で、施行後5年以内に審査の効率化や審査体制の充実を含む「安全確保のための規制のあり方」について政府が検討を行うこととされ、原案と合わせて可決された。

同法案は、脱炭素電源の利用促進を図りつつ電気の安定供給を確保するための制度整備に向け、2月に閣議決定された「GX(グリーントランスフォーメーション)実現に向けた基本方針」に基づき、「地域と共生した再生可能エネルギーの最大限の導入促進」、「安全確保を大前提とした原子力の活用」を柱に、関連法を改正するもの。3月30日の衆議院での審議入りに際し、岸田文雄首相は、本会議で「国民生活や産業の基盤となるエネルギーの安定供給と、気候変動問題への対応を両立すべく、脱炭素電源である再エネ、原子力を含めたあらゆる選択肢を確保する」と、その趣旨を強調している。

山口氏

経済産業委員会では、同法案に関し、計6回の会合、および環境委員会と原子力問題調査特別委員会との連合審査会を行った。4月14日には、参考人として、山口彰氏(原子力安全研究協会理事)、満田夏花氏(国際環境NGO FoE Japan 事務局長)、山内弘隆氏(一橋大学名誉教授)、大島堅一氏(龍谷大学政策学部教授)を招き質疑応答。

山口氏は、今回の法案に関し、

  1. 「安全最優先」の原子力利用
  2. 脱炭素社会の実現に貢献する基本的政策
  3. 持続的なエネルギー確立の実現
  4. 電気事業の安定性と予見性の確保

――の方向性が示されたと強調した。その上で、世界の一次エネルギー源の変遷について、海外の有識者によるデータから、19世紀半ば以降、最大のシェアが、1880年に石炭が木材(薪)に、1960年に石油が石炭に取って代わったことを示し、「1970年まで人類は、時代ごとに、潤沢で、低廉で、安定なエネルギーを探し求め、それぞれが新しい主役を担ってきた」と説明。一方で、現在の世界のエネルギーミックスに関しては、化石エネルギー(石油、石炭、LNG)が84%、脱炭素エネルギー(水力、再生可能エネルギー、原子力)が16%で、「日本もほぼ同じ」と説いた上で、「これを逆転させるよう、しっかりとした目標を掲げるべき」、「GX実現のポイントは、省エネ、再エネ、原子力の3つ」と主張した。

福島の被災者支援に取り組む満田氏は、原子力事故が及ぼす影響の他、損害賠償や廃炉に要する費用の国民負担なども懸念し、福島で国会主催の公聴会を開催することを切望。

環境経済学の立場から、大島氏は、「原子力発電に係る国費投入額や事故対策費用で合計約33兆円が投じられる」との試算を示すなどした上で、原子力を主力電源として位置付けることに否定的な考えを主張した。

山内氏

総合資源エネルギー調査会の電力・ガス需給・制度設計に関する小委員会で委員長を務める山内氏は、公益経済学の立場から、インフラ事業を市場原理に委ねる限界やリスクに言及。今回法案の柱の一つ「地域と共生した再エネの最大限の導入促進」に関連し、成田空港の敷地を活用した太陽光発電所の設置構想を披露。地元企業とも連携し、空港施設への電力供給の他、水素を製造して航空機燃料のクリーン化も図るもので、脱炭素社会実現に向けて「エネルギー分野だけでは達成できない」、「国有資産にはまだ活用の余地がある」と強調した。

今回の法改正案で、原子力発電の運転期間に係る規定は、原子炉等規制法から電気事業法に移管。「最長で60年」との現行の枠組みを維持した上で、原子力事業者が予見しがたい事由による停止期間に限り、60年の運転期間のカウントから除外される。國場幸之助委員(自民党)は、「『運転期間制度を見直しても安全性は必ず優先される』ことをどのように担保するのか」と質問。これに対し、山口氏は、今回の法案で、高経年化した原子炉に対する規制の厳格化、事業者の責務の明確化が記載されたことを述べるとともに、米国における多くの長期運転実績、関西電力美浜3号機の40年超運転入りに言及し、「技術的観点からしっかりとしたリスク評価・安全管理ができている」と応えた。

原子力の特殊管製造に関わった経験も踏まえ意見を述べる大島委員

続く21、26日の同委員会会合には、経済産業省、原子力規制委員会の他、文部科学省の担当審議官も出席。原子力開発の技術基盤・人材確保に関連した質疑応答も行われた。21日の会合では、大島敦委員(立憲民主党)が、今後の高速炉開発に向け「もんじゅ」事故の教訓を踏まえる必要性とともに、鋼管メーカーの勤務経験から、「工場を一度閉めてしまうと製品は二度と作れなくなる」と述べ、サプライチェーンの維持や技術継承の課題を指摘。26日の会合では、鈴木義弘委員(国民民主党)が、日本で初めて原子力発電に成功した動力試験炉「JPDR」の廃止措置完遂を視察した経験に触れ、廃炉に伴う放射性廃棄物の処分、クリアランス制度[1]放射能濃度が基準値以下であることが確認されたものを再利用または一般の産業廃棄物として処分できる制度による再利用について、国が着実に道筋をつけていくよう求めた。

※写真は、いずれもオンライン中継より撮影。

脚注

脚注
1 放射能濃度が基準値以下であることが確認されたものを再利用または一般の産業廃棄物として処分できる制度

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