ITER「トロイダル磁場コイル」の初号機が完成、ビゴITER機構長が日本の技術を賞賛
31 Jan 2020
報道陣に公開されたTFコイル(三菱重工二見工場にて)
国際熱核融合実験炉(ITER)計画で日本が製作を担う「トロイダル磁場コイル」(TFコイル)と呼ばれる機器の初号機が完成し、1月30日に三菱重工業の二見工場(兵庫県明石市)で記念式典が行われた。
TFコイルは、ドーナツ状をした磁気の籠の中にプラズマを閉じ込めるトカマク型核融合の重要な機器の一つで、今回の完成により、2025年の運転開始に向けて現在フランスで進められているITERの建設が大きく前進することとなった。ITERで用いられるTFコイルは、高さ約16.5m、幅約9m、重量約300トンのD字型をした世界最大級の超電導コイルで、中心ソレノイドコイルを囲むように計18基が放射状に配置される。
予備1基を合わせ計19基が製作されるTFコイルのうち、9基を日本、10基を欧州が分担。巨大な寸法に対し1万分の1以下の精度でコイルを巻線・製作することが要求される。今回の完成を受け、式典に出席したITER機構長のベルナール・ビゴ氏は、「日本は常にプロジェクトの中心となる貢献をしており、世界の核融合開発の牽引役だ。クリーンで、安全で、持続可能なエネルギーを得られる核融合の実現に大きく近付いた」と、日本の製造技術を賞賛した。
また、TFコイルに関し、2005年から製作に向けて研究開発を進めてきた量子科学技術研究開発機構の平野俊夫理事長は「新たな挑戦に心が躍る」と、2012年から製作に取り組んできた三菱重工業の泉澤清次社長は「これまで培ってきた技術力を日本のワンチームとして発揮した」と、ITER計画の大きなマイルストーンに際し所感を述べた。
TFコイルは、今回の初号機を含めた5基分について、巻線部を三菱電機が、外側構造物は韓国で製作し、同工場で一体化することで完成体となり、神戸港からフランスに向けて出荷される運び。
ITER建設の進捗率は2019年末時点で約67%となっている。