JASTJ 福井県年縞博物館の展示に特別賞贈呈
08 May 2023
福井県年縞博物館(FNCAホームページより引用)
日本科学技術ジャーナリスト会議(JASTJ)は4月20日、科学技術に関する優れた報道や啓発活動などを顕彰する「科学ジャーナリスト賞」の2023年度受賞作品を発表した。JASTJは、ジャーナリスト、企業・研究機関の広報担当者らで構成される科学技術ジャーナリズムの向上・発展を目指し活動する団体で、講演会や見学会の開催などを通じ会員の資質・見識の向上や相互間の親睦を図っている。
2023年度の「科学ジャーナリスト賞」では、最も名誉な大賞の該当作品はなかったが、「気候変動など、人類が直面する地球環境の課題を考える」継続的な取組として、福井県年縞博物館(福井県若狭町)の常設展示に特別賞が贈られた。
この常設展示は、立命館大学との協力により、三方五湖の一つ「水月湖」の湖底で堆積する地層が年ごとに積み重なって描く縞模様「年縞」を用いて、考古学における遺物の年代測定を精緻化する研究成果を展示している「世界唯一」のもの。遺物の年代測定は、これに含まれる放射性炭素14の残存量による方法があるが、生物では年代によってその量が変動しており、遺骸からでは正確な年代が測定できない。「水月湖」では好条件が幾つも重なり、世界に類を見ないほどの年月にわたり「年縞」が形成され続け、その規模は約45m・7万年分にも及ぶ。例えば、「年縞」の13,927層目から出土した葉は13,927年前のものとなり、同じ葉を放射性炭素14の残存量で調べた年代との差が補正される。つまり、「年縞」が過去約7万年の地球の歴史をたどる「ものさし」となるのだ。この「年縞」は年代決定の世界標準尺度に採用されている。
同博物館には、原子力・放射線を用いた測定技術が気候変動に関する研究に応用されている実例をとらえ、原子力協力の多国間枠組み「アジア原子力協力フォーラム」(FNCA)の気候変動科学プロジェクトの専門家が2019年に視察に訪れている。