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芸術文化で復興支援 経産省の若手有志

19 Jun 2023

「福島芸術文化推進室」の看板掛けを行う西村経産相(左から4人目、経産省発表資料より引用)

経済産業省の若手職員を中心とする芸術文化の力を活用した福島復興の取組が本格化しつつある。

映像・芸術文化を通じた魅力あるまちづくりに向け、昨夏、経産省の若手有志職員により「福島浜通り映像・芸術文化プロジェクト」が立ち上がり、その皮切りとして、8月に、監督、脚本家、俳優、映像制作に関わる学生、地域住民らが集う映画イベントが双葉町で開催された。

これを踏まえ、経産省は6月15日、芸術家が浜通り地域に一定期間滞在し作品を制作する「滞在制作支援」など、2023年度の新規予算事業実施に伴い、「福島芸術文化推進室」を設置。16日には、西村康稔経産相が同プロジェクトに参画する若手職員(各所属部署の所掌業務の傍ら福島復興に取り組む)とともに看板掛けを行った。〈経産省発表資料は こちら

同日の閣議後記者会見で、西村経産相は、「新しい発想で今後、福島の浜通りから心を潤してくれる映像、芸術文化を創造し、また発信することを通じて新たな魅力をつくり出してもらいたい」と、若手職員の活躍に期待。昨夏の映画イベントでは、中高生を対象に短編映画制作を体験させる合宿ワークショップも行われたが、年間100作品の劇場公開に足を運んだ往年の「映画少年」を自称し今もNetflixの動画配信をよく見るという西村経産相は、特に地元の学生たちによる映画制作への支援に意欲を示した。

「東京国際映画祭」でトークセッションに臨む今泉監督、受賞作「窓辺にて」は稲垣吾郎さん主演のラブストーリー(インターネット中継)

まずは映画に着目する「福島浜通り映像・芸術文化プロジェクト」だが、2023年度からの「滞在制作支援」を見据え、2022年10月、「第35回東京国際映画祭」と連携し、福島における映画制作の将来を語り合うトークセッションが行われ、好評を博している。

その中で、ダンサー・田中泯さんの生き様を描いたドキュメンタリー「名付けようのない踊り」(2022年公開)の犬童一心監督は、帰還困難区域で撮影を敢行した経験を振り返り、「映画の中で撮影しておくと記録にもなる」と、映画制作の副次的意義を強調。また、今回の映画祭で観客賞を受賞した「窓辺にて」(同)でメガホンをとった郡山市出身の今泉力哉監督は、「福島に住み続け映画を作り続ける若者」が現れることを強く期待した。

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