原子力産業新聞

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群大 閉鎖空間の感染症対策に向け空気の汚れを「見える化」

12 Jul 2023

群馬大学重粒子線医学推進機構の研究グループは7月11日、咳などにより発生する空気中の汚れの状況を調べ、狭あいな治療室など、閉鎖空間における影響を明らかにしたと発表した。新日本空調の独自技術「微粒子可視化システム」を用い、空気中の汚れを「見える化」するもので、感染症全般のまん延防止に役立つことが期待される。〈群大発表資料は こちら

重粒子線治療を行う同研究グループによると、放射線治療を受ける患者は仰向けでの治療が一般的で、体を固定する装具は頭から首までを覆うことが多く、装着時に患者はマスクを外す必要があり、人によっては首が圧迫され咳が誘発されやすい。特に、放射線治療室は一般的に狭い密室空間であることから、医療スタッフにも感染リスクが高まる可能性がある。新型コロナウイルスを始めとした感染症への対応も喫緊な中、「がん治療に関連する医療スタッフへの感染対策として、放射線治療室内の汚れ具合の実態調査は急務」との考えから研究に着手したもの。

今回の研究では、クリーンルーム(飛沫の動きのみを観察するために、背景に存在する無数の粒子の可及的除去が可能な装置を搭載)で、「微粒子可視化システム」を用いて、模擬患者から発生した飛沫の動きや到達点を「見える化」。クリーンルームでは、(1)通常の発声(2m程度の距離で聞こえる範囲の声の大きさ)、(2)大声による発声、(3)咳――の3種類で評価。その結果、通常の発声と比較して、大声と咳では、口の位置から垂直方向と、頭と足側から水平方向のいずれも飛沫の到達距離が大きく、特に口から70cm周囲が汚染されていた。実際の放射線治療室でも医療スタッフの立ち位置による汚染度合の比較を行っている。同研究成果は、今秋の日本放射線腫瘍学会で発表・議論され、有効な感染症防御対策の開発に寄与していく見通し。

なお、同研究に協力した新日本空調は、原子力空調設備での施工実績を数多く有するほか、昨今の感染症対策への関心の高まりから、独自技術の「微粒子可視化システム」や「飛沫計測技術」を用いて、オーケストラの演奏者・聴衆の飛沫感染リスク低減に関する検証を行うなど、注目を集めている。

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