原子力産業新聞

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エネ庁 核燃料サイクルをテーマにコンテンツ強化

24 Jul 2023

福井南高の生徒がデザインし同校に設置されたクリアランス物による照明灯、越前水仙を模している(エネ庁ホームページより引用)

資源エネルギー庁は、エネルギー政策をめぐる様々な話題をわかりやすく解説するウェブサイト上の記事シリーズ(スペシャルコンテンツ)で、核燃料サイクルに関するテーマを相次いで取り上げている。

原子力発電所の再稼働・運転期間延長、高レベル放射性廃棄物の処分地選定、福島第一原子力発電所の廃炉・汚染水対策など、昨今メディアで多く取り上げられる話題と比べ、忘れられがちな再処理、使用済燃料貯蔵、MOX燃料利用計画、クリアランス制度[1]放射能濃度が基準値以下であることが確認されたものを再利用または一般の産業廃棄物として処分できる制度の「今」を平易に紹介。さらに詳しく知りたい人のために、過去に掲載した記事へのリンクも設定している。

7月18日には、スペシャルコンテンツ「使用済燃料を有効活用!『核燃料サイクル』は今どうなっている?」を公開。折しも同日の原子力委員会会合で、2022年末時点、日本が保有するプルトニウムは、関西電力高浜4号機へのMOX燃料装荷などにより、前年末比で約0.7トン減少していることが報告されている。同コンテンツでは、核燃料サイクルを確立するため、解決すべき課題として、(1)再処理工場の稼働、(2)使用済燃料の貯蔵、(3)MOX燃料利用の推進――をあげ、それぞれの現状を説明。六ヶ所再処理工場については、2022年内に主要な安全対策工事が概ね終了し、2024年度上期のできるだけ早期のしゅん工に向け、大詰めの段階。使用済燃料貯蔵については、全施設の管理容量合計約2.4万トンに対し、貯蔵総量は約1.9万トンと、約80%までに達しており、現在、約4,600トン相当の貯蔵容量拡大に向けて、サイト内の乾式貯蔵施設、むつ市の中間貯蔵施設など、具体的な取組が進展している。MOX燃料については、現状の4基から2030年度までには少なくとも12基へと、利用先の拡大に向け、地元への理解活動や事業者間連携の強化が図られていく見通しだ。

また、7月21日には、スペシャルコンテンツ「リサイクルで活用する原子力発電の“ゴミ”~『クリアランス制度』の今」を公開。同コンテンツでは、クリアランス制度のもとで進められている廃棄物再利用について、最近の活用事例を紹介している。例えば、中部電力では、浜岡原子力発電所地元の鋳造所に委託して、クリアランス金属を再利用した側溝用のグレーチング(すのこ状の蓋)を製造し、発電所敷地内の道路で活用。また、福井県内では、クリアランス物の再利用に関する実証事業により、公共施設のサイクルラック(自転車を停めておく器具)の他、高校生らがクリアランス制度について学んだ上でデザインした照明灯が使われている。クリアランス対象物は現状で年間約1,000トン発生しているが、既に廃炉が決まっている原子力発電所の数から、約10年後には10倍に増加する見通し。廃炉のスムーズな進行や資源の有効活用の観点から、今後は、電力業界内に限らず、クリアランス物の積極的な利用を進めていくことが必要と指摘している。

脚注

脚注
1 放射能濃度が基準値以下であることが確認されたものを再利用または一般の産業廃棄物として処分できる制度

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