原産協会理事長 ALPS処理水の理解「粘り強く国際社会に」
28 Jul 2023
会見を行う新井理事長
原産協会の新井史朗理事長は7月27日、記者会見を行い、福島第一原子力発電所で発生するALPS処理水[1] … Continue readingの海洋放出に関して、粘り強く国際社会へ訴えていく考えを明らかにした。
新井理事長は、IAEAが4日に公表したALPS処理水の安全性レビューに関する包括報告書の示す「海洋放出へのアプローチ、並びに東京電力、規制委員会、日本政府による活動は国際的な安全基準に合致している」、「計画されている海洋放出が人および環境に与える放射線の影響は無視できる水準である」との結論について、「グローバルスタンダードな評価として、わが国にとって大変心強いものだ」と強調。一方で、放出完了までに長い期間を要することから、「的確な運転操作の継続と設備の劣化などへの対応も必要」として、高い透明性の確保に加え、中長期的な課題に対する検証、国内外にある様々な不安や懸念に向かい合い続けることの重要性をあらためて述べた。
中国における海洋放出を理由とした日本からの輸入水産物の放射性物質検査を強化する動きに関し、「運転中プラントからの放出と同様、環境や人に影響しない科学的根拠に基づく放出であることを、粘り強く国際社会に訴えていかねばならない」と強調。ウェブサイトを通じた情報発信や、中国、韓国、台湾の原子力産業団体で構成する「東アジア原子力フォーラム」を通じた対話など、原産協会によるこれまでの取組に言及し、今後も「原子力産業界をあげて、廃炉と復興の両立を支援していく」との姿勢を示した。
海洋放出への社会の理解について問われた新井理事長は、廃炉と復興の両立と、再稼働した原子力発電所の地道な安全・安定運転が信頼回復の一歩と述べた。風評被害対策に関しては、電気事業連合会による全国大の水産加工品消費・売上げ振興策に言及した。
この他、高温ガス炉実証炉の基本設計を担う中核企業として資源エネルギー庁より25日に三菱重工業が選定されたことについて、高温熱を用いた水素製造の可能性や立地の課題に関し質疑応答がなされた。〈理事長メッセージは こちら〉
なお、三菱重工は、2030年代の運転開始を目指す高温ガス炉実証炉の建設に向け、研究開発および設計、建設までを一括して取りまとめていく。同社は、日本原子力研究開発機構の高温工学試験研究炉「HTTR」による水素製造の実証試験を進めており、今回の中核企業への選定を受け、「これまでの高温ガス炉開発における当社の豊富な実績や研究開発への積極的な取組、高い技術力などが評価された」と、コメントしている。
脚注
↑1 | 多核種除去設備(ALPS)等により、トリチウム以外の放射性物質について安全に関する規制基準値を下回るまで浄化した水。海水と混合し、トリチウム濃度を1,500ベクレル/リットル(告示濃度限度の40分の1)未満に希釈した上で放水する |
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