福島第一のALPS処理水海洋放出 24日に開始へ
22 Aug 2023
福島第一のALPS処理水海洋放出設備を視察する岸田首相(左から2人目)©東京電力
福島第一原子力発電所の廃炉・汚染水対策に関する関係閣僚会議が8月22日に開かれ、ALPS処理水処分に向けた安全確保や風評対策に係る政府全体の取組について確認を行った上、海洋放出の開始時期は「気象・海象条件に支障がなければ8月24日を見込む」ことを決定した。〈配布資料は こちら〉
会議に出席した岸田文雄首相は、「福島の復興を実現するために、ALPS処理水処分は決して先送りできない課題」と、あらためて強調。ALPS処理水の海洋放出に係る日本やIAEAの科学的根拠に基づいた取組に対しては「国際社会の正確な理解が確実に広がりつつある」と評価。また、一部にみられる輸入規制の動きに対しては、引き続き早期撤廃を求めるとともに、水産物の国内消費の拡大、国内生産の維持、新たな輸出先開拓などの対策を講じていくとした。同会議では、ALPS処理水処分に伴う風評対策を中心とした政府全体の行動計画を改定。岸田首相は、「廃炉およびALPS処理水の放出を安全に完遂すること、処理水の処分に伴う風評影響や生業継続に対する不安に対処すべく、たとえ今後数十年の長期にわたろうとも、処分が完了するまで政府として責任をもって取り組んでいく」と強調した。
ALPS処理水の安全性に関しては、7月4日にIAEAが「海洋放出は関連する国際安全基準に合致しており、人および環境に対し、無視できるほどの放射線影響」とする包括報告書を日本政府に提出。同7日には、ALPS処理水希釈放出設備に関する使用前検査の終了証が原子力規制委員会より東京電力に交付された。岸田首相は8月20日、福島第一原子力発電所を視察し、安全性確保の取組状況を確認。21日には、全国漁業協同組合連合会の坂本雅信会長らと官邸内で会談し、同氏より「漁業者の生業継続に寄り添った政府の姿勢と対応について、われわれの理解は進んでいる」との声を聴いたとしている。
東京電力は、ALPS処理水の海洋放出の開始時期に係る政府の判断を受け、「規制委員会の認可を得た実施計画に基づき、今後、最大限の緊張感をもって、放出開始に向けた準備を速やかに進めていく」とするコメントを発表。海洋放出の始動段階における対応に遺漏がないよう、経営陣が現場情報を適時に把握した上で、廃炉、賠償、風評対策に関わる様々な部署を横断的に統括する社長直轄プロジェクトチームを立ち上げるなど、体制強化を図るとしている。合わせて、初回放出の第1段階の準備作業開始を発表。ごく少量のALPS処理水を海水で希釈し、貯留水が入っていない放水立坑に流し込み、トリチウム濃度を分析。ALPS処理水が想定通り希釈されていることを確認した上で、第2段階として海洋放出を開始する。2023年度計画の海洋放出で、年度末までにタンク約10基分が減る見通し。
また、IAEAはコメントを発表し、7月に公表した包括報告書の結論をあらためて示すとともに、ALPS処理水の海洋放出開始後も引き続き情報提供を図っていくなどとしている。