原子力産業新聞

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復興庁 震災から10年間の取組を総括

04 Sep 2023

「福島イノベーションコースト構想」に基づき2020年3月、浪江町に開設された福島水素エネルギー研究フィールド(NEDO発表資料より引用)

9月1日の「防災の日」をとらえ、復興庁は8月29日、報告書「東日本大震災 復興政策10年間の振り返り」を公表した。

昨秋からの有識者による議論も踏まえ、2011年3月の東日本大震災発災から「第1期復興・創生期間」[1] … Continue readingが終了した2021年3月末までの概ね10年間について、復興に係る国の制度・組織や取組の変遷、施策の趣旨や経緯、その評価・課題を取りまとめたもの。

同書では冒頭、発災からの10年間を振り返り、被災地の復興は着実に進展し、地震・津波被災地域では、住まいの再建やインフラ整備が概ね完了したと概括。一方で、引き続き、被災者の心のケアや水産加工業の売上げ回復などの課題が残されており、中長期的な対応が必要な原子力災害被災地域では、本格的な復興・再生に取り組んでいる状況との認識を示している。特に、原子力災害からの復興については、「わが国が経験したことのない試練であり、政府としても多くの課題に直面しながら、どのように復興を進めていくのかが模索され、現在においても中長期の課題となっている」と強調。東日本大震災以降も日本は多くの災害に見舞われてきたが、南海トラフ地震など、将来、予想される大規模災害を見据え、「東日本大震災で行われた数々の政策や取組が必ず参照される」と、同書をもとに復興に備えておくよう促している。

福島第一原子力発電所事故に関しては、「原子力災害固有の対応」として章立て。事故の概要、避難指示の経緯と帰還・移住の促進・生活再建、除染、放射線の不安対応、食品の安全性確保、風評払拭、産業創生などの取組について整理している。帰還困難区域では今なお避難指示が継続しており、被災地の住民意向調査から、「避難指示解除が遅れると居住率・帰還率が下がる傾向にある」などと指摘。その上で、「復興のステージが進むにつれて生じる新たな課題や多様なニーズにきめ細かく対応しつつ、本格的な復興・再生に向けた取組を行う必要がある」と述べている。具体的には、地震・津波被災地域と共通する事項の他、それぞれの地域の実情や特殊性を踏まえながら、

  • 廃炉・汚染水・処理水対策
  • 福島県内で発生した除去土壌に係る中間貯蔵施設の整備・管理運営、30年以内の県外最終処分
  • 避難指示が解除された地域における生活環境の整備
  • 特定復興再生拠点区域外の避難指示解除
  • 「福島イノベーションコースト構想」の推進
  • 「福島国際研究教育機構」の整備

――などの取組を今後も進めていくとしている。

脚注

脚注
1 2011年7月に政府が決定した「東日本大震災からの復興の基本方針」に基づき設定された「集中復興期間」(2011~15年度)に続く「復興・創生期間」(2016~20年度)を指す。現在「第2期復興・創生期間」(2021~25年度)にある。

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