世界の「環境危機時計」 昨年より“4分戻る”
11 Sep 2023
「環境危機時計」の推移(旭硝子財団発表資料より引用)
旭硝子財団は9月6日、世界の政府・自治体、NGO・NPO、大学・研究機関、マスメディアなどの環境問題に関わる有識者らを対象に行った「地球環境問題と人類の存続に関するアンケート」の結果を発表した。〈旭硝子財団発表資料は こちら〉
1992年以来、毎年実施されている同調査は、今回で32回目。2023年4~6月、アジア地域を中心とする国内外約30,000人に調査票を送付し、約1,800件の回答を得たもの(回収率6.1%)。その結果、2023年の「環境危機時計」の時刻は「9時31分」で、2011年以来、針が進む(危機感が進行)傾向にあったが、2021年から3年連続で針が戻り(危機感が解消)、2022年の調査との比較では4分針が戻った。
調査対象者は、気候変動、人口、食糧など、地球環境の変化の指標となる9つの項目に基づき、人類存続の危機に関する認識の度合いを、0~12時までの時刻に置き換え回答。「殆ど不安はない」(0~3時)、「少し不安」(3~6時)、「かなり不安」(6~9時)、「極めて不安」(9~12時)というイメージだ。調査結果は、「環境危機時計」と称され、地球環境問題の関心喚起・解決策に資するものとなる。
地域別にみると、2022年に比べ、南米、西欧、中東では10分以上針が戻ったが、メキシコ・中米・カリブ諸国、東欧・旧ソ連では20分以上針が進んだ。ウクライナ情勢が影響しているものとみられる。日本は、世界全体と同じ「9時31分」で、前回に比べ2分針が戻った。
年齢層別には、60代以上が「9時46分」、40~50代が「9時36分」、20~30代が「9時19分」で、年齢が高いほど針が進んでいる傾向がみられた。
また、環境問題への取組に対する改善の兆しを探るべく、パリ協定、SDGsが採択された2015年より以前と比較し「脱炭素社会への転換は進んでいると思うか」を尋ねたところ、「政策・法制度」や「社会基盤(資金・人材・技術・設備)」の面は、「一般の人々の意識」の面ほど進んでいない、との結果が示された。さらに、SDGsへの関心については、「日々の生活で関心を持っている目標」として、「目標13 気候変動に具体的な対策を」、「目標3 すべての人に健康と福祉を」、「目標7 エネルギーをみんなにそしてクリーンに」、「目標15 陸の豊かさを守ろう」が多くあげられ、「目標7 エネルギーをみんなにそしてクリーンに」は、アジア、東欧・旧ソ連で多く選ばれていた。「世界の問題として関心が高い目標」としては、「目標13 気候変動に具体的な対策を」が、すべての国・地域で群を抜いて最も多く選ばれていた。
同財団では、合わせて、国内外の一般生活者を対象とした環境危機意識調査の結果も発表している。