原子力委 ジェンダーバランスの改善で議論
13 Sep 2023
原子力委員会は8月29日の定例会で、OECD/NEA(経済協力開発機構/原子力機関)が6月に発表した理事会勧告「原子力部門におけるジェンダーバランスの改善」を踏まえ意見交換を行った。〈資料は こちら〉
OECD/NEAは2019年から原子力分野のジェンダーバランス改善に向けた活動を開始。これまでに10回の会合、国別調査の実施、報告書の公表を経て、2023年6月に理事会勧告を行った。3月に公表された定量的調査では、原子力分野の全労働者に占める女性の比率は、平均で24.9%であるのに対し、日本は約15%の最低水準。その他、昇進、賃金格差などにおいて、日本は調査対象国の中で圧倒的に最下位だった。定性的調査においても、「職場は女性を十分にサポートしていない」、「原子力特有の問題が女性の貢献を制限している」ことが判明。日本のジェンダーバランスは、他国と比べて大きく遅れていることが顕在化した。
この調査を踏まえ、OECD/NEAは6月、「原子力部門に女性を誘致するための行動をとること」、「労働力として女性を確保し支援すること」、「原子力部門のリーダーとして女性を育成し、その貢献を強化すること」などを勧告した。今後は、勧告の実施と監視を促進する作業部会が再組織される見込みだ。
今回の原子力委員会会合では、国内関係機関における良好事例の収集・共有、具体化した取組の発信、STEM(科学、技術、工学、数学)分野の女性を対象とする具体的な取組などについて考察。その中で、岡田往子委員は、OECD/NEAにおいて、ジェンダーバランスの改善は「原子力安全における人的側面」にカテゴリーされていることを述べた。その上で、多くの女性を原子力界に取り込むことによって、安全な原子力の推進を実践しようとしており、労働力不足の解決といった視点ではなく、ジェンダーバランスの改善が原子力安全に寄与するという考え方を強調。今後の取組の方向性として、
- 日本原子力学会のダイバーシティ推進委員会によるロールモデル集作成などの動きに女性が積極的に参画
- 大学・研究機関との意見交換などを通じ、良好事例を収集し関係機関間で共有
- 「原子力人材育成ネットワーク」(原子力人材育成に係る産学官連携のプラットフォーム)による具体的取組について、日本原子力産業協会を中心に情報発信
- 原子力界による既存の活動を通じ、「Win-Japan」(原子力・放射線による利用の分野で働く女性による国際NGO「Win-Global」の日本支部)を活性化
――することを提言。さらに、「原子力分野と放射線の負のイメージの結び付きから、『女性には危険な仕事』ととらえられやすいことが、女性を遠ざけてしまう」として、こうした「無意識のバイアス」を改めていく工夫も必要と述べた。
これを受け、佐野利男委員は、広島・長崎の原爆投下など、日本特有の要因に関してもさらに深掘りしていく必要性に言及。上坂充委員長は、8月22日~9月8日に開催された「Japan-IAEA 原子力マネジメントスクール(NEMS) 2023」での登壇を振り返り、日本人研修生は海外に比べ女性が極めて少ないことを指摘し、「あらためて問題意識を感じる」と述べた。
*岡田原子力委員も含め、OECD/NEA8か国の女性がメッセージを寄せています。こちら をご覧ください。