原子力産業新聞

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宮城県 スマホアプリで原子力災害時の避難支援

26 Sep 2023

「ポケットサイン防災」を使って検査場の受付をする宮城県・村井知事(ポケットサイン社発表資料より引用)

宮城県は9月27日より、女川町全域を対象に、原子力災害時の住民避難を支援するスマートフォンアプリの運用を開始する。〈宮城県発表資料は こちら

ポケットサイン社が手がけるマイナンバーカードを活用した防災デジタル身分証アプリ「ポケットサイン防災」によるもので、災害発生時には、マイナンバーカードの情報をもとに、住民の年齢・性別・住所などに応じた避難指示を、スマートフォンを通じ瞬時に通知。住民は迅速かつ正確に避難指示を受取り避難に移れる。発災時、住民は避難所の二次元コードをスマートフォンで読み取りチェックイン。自治体はいつ、誰が、どこにチェックインしたかをリアルタイムに把握。さらに、アンケート機能を活用し避難所のニーズを即座にキャッチ。チェックイン時に発信された避難者の数や特性のデータと組み合わせることで、避難所の状況を一目で確認できる。

宮城県は8月に同社と原子力防災システムの契約を締結。同契約のもと、東北電力女川原子力発電所での重大事故を想定した「ポケットサイン防災」の実証試験が住民も協力し行われた。その結果、避難車両に付着した放射性物質の検査場において、避難車両10台の通過にかかる時間が、アプリ方式では約9分と、従来手法の約15分より約4割短縮。実証試験に参加した村井嘉浩知事は、「アプリは圧倒的に便利で早く、誰が通過したかが瞬時にわかる」と評価している。

原子力防災向けの機能として安定ヨウ素剤の服用に関する説明も送信。宮城県では、買物に利用できるポイント付与により口コミを通じた普及を図る考えだ。運用地域については、発電所から概ね30km圏の地域に順次拡大される予定。

国内では依然と大規模災害が後を絶たないが、2021年に東日本大震災発生10年を機に日本学術会議が開催した学協会連携シンポジウムでは、避難所の光景が1959年の伊勢湾台風の頃からほとんど変わっていないことが指摘されている。複合災害、感染症対策、プライバシー保護など、災害対応における新たな課題が顕在化する昨今、こうした通信ネットワーク技術により避難所運営に変革がもたらされることが期待できそうだ。

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