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筑波大 放射線がん治療の精度向上で新技術

27 Sep 2023

筑波大の陽子線治療施設、累計の治療患者数は7,000人を超える(医用財団ホームページより引用)

筑波大学は9月25日、画像情報から放射線治療中の臓器の三次元的な動きを予測する支援技術を開発したと発表した。〈筑波大発表資料は こちら

放射線がん治療は、早期の社会復帰が可能な非侵襲的医療として期待が高まっている一方、周辺の正常な臓器にも影響が及ぶ可能性があり、近年のMRI撮影による二次元画像を取得しながらの治療でも、動きのある病変組織への適切な照射が治療成績の向上に向け課題となっている。

同学では、「呼吸のように規則正しい動きは、機械学習などを用いて予測できるが、周辺臓器との接触などによる不規則な動きは予測が困難」なことから、放射線治療中、リアルタイムで3方向から患部付近の断面を撮影し、周辺臓器との位置関係から各臓器の三次元的な動きを予測する技術を開発した。具体的には、治療前、患者本人の対象臓器および周辺臓器を含む三次元モデルを構築し、コンピューターを用いた「接触シミュレーション」と呼ばれる手法で三次元的な動きを予測。これを、二次元画像の撮影ができる放射線治療装置と併用することで、患部の位置をより正確に把握し正常な臓器への影響を防ぐというもの。

今回、同技術の検証のため、症状が出にくく進行が速いことから「がんの王様」とも呼ばれるすい臓がんに着目。20症例の公開MRIデータについて、すい臓の位置を計算した結果、誤差は、1方向のみの二次元画像では5.11mmだったのに対し、3方向を用いた場合は2.13mmと、精度の向上が確認された。

筑波大では、陽子線治療で多くの実績を積んでいるが、今回の新技術に関し、「体内での臓器は常に動いており、そのような動きを正確にとらえることは、放射線治療を始めとする、より正確で安全な治療技術の確立につながる」と、実用化に向け期待を寄せている。

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