「原子力拡大へ向け今こそ行動を」原産協会らが共同声明
02 Oct 2023
共同ステートメントを掲げる産業界代表(前列)と各国の関係閣僚ら©OECD
日本原子力産業協会は9月28日、フランスで開催された「新しい原子力へのロードマップ」会合に参加。各国の原子力産業団体が連名で、気候変動の緩和およびエネルギー・セキュリティの強化へ向け、原子力発電の迅速かつ大規模な導入を強く訴える共同ステートメントを発表した。
同会合は、OECD原子力機関(NEA)と仏エネルギー移行省の共催で、パリのOECD本部で開催された官民のハイレベル会合。今回が初開催となる。OECD加盟各国政府並びに各国の原子力関連団体が参加。共同ステートメントに署名したのは、日本原子力産業協会の他、米原子力エネルギー協会(NEI)、世界原子力協会(WNA)、カナダ原子力協会(CNA)、英原子力産業協会(NIA)、欧州原子力産業協会(nucleareurope)、仏原子力産業協会(Gifen)、韓国原子力産業協会(KAIF)、CANDUオーナーズグループ(COG)の計9団体。
同ステートメントは、今年の4月に札幌で「G7気候・エネルギー・環境相会合」に併せ、原産協会らが採択した同種のステートメントをベースとしている。今回のステートメントは参加団体が増えただけでなく、対象をG7からOECD加盟国へ拡大。OECD加盟国の原子力産業界の決意を表明するとともに、各国政府や、11月から始まる国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)に参加する世界のリーダーたちへ向けた要望を、とりまとめた。
具体的には、官民が連携して取り組む重要事項として
- 既存炉の最大限活用
- 新規炉導入の加速
- 国際協力によるサプライチェーンの構築
- 原子燃料分野のロシア依存低減
- 原子力部門におけるジェンダーバランスの改善
などを指摘。そして、2050年までの炭素排出量実質ゼロ目標を達成するには、原子力発電設備容量を現在の2~3倍に拡大する必要があるとの認識の下、
- 原子力への投資を促進するよう市場環境を整備
- 規制基準の標準化および効率化
- 原子力を他のクリーンエネルギー源と同等に、気候変動緩和策として認めること
などを要望している。
近年、世界の原子力産業界の間では、エネルギー・セキュリティの確保と、CO2排出量の実質ゼロ化の両立に、原子力が果たす役割を世間に周知しようと、個別ではなく国際間で連携して活動する風潮が主流となっている。先月ロンドンで立ち上げられた「ネットゼロ原子力(Net Zero Nuclear=NZN)」イニシアチブも同様の流れだ。11月のCOP28では、国際原子力機関(IAEA)だけでなく、世界の原子力産業界も共同でブースを立ち上げる計画であり、原子力が果たす多大な貢献を世界中に周知し、原子力開発の世界規模での拡大を目指している。