原子力産業新聞

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QST「JT-60SA」で初プラズマ 核融合エネ実現に前進

25 Oct 2023

「JT-60SA」全景(QST発表資料より引用)

量子科学技術研究開発機構(QST)は、那珂核融合研究所(茨城県那珂市)にある核融合超伝導トカマク型実験装置「JT-60SA」で、10月23日夕刻、初プラズマ生成に成功した。〈QST発表資料は こちら

「JT-60SA」は、国際熱核融合実験炉(ITER)計画を補完・支援するものとして日欧共同で取り組む「幅広いアプローチ(BA)」活動の一つで、海外が200億円超の大型資金を日本設置の研究開発装置に投資する初の事例。世界各国が核融合開発にしのぎを削る中、今回の初プラズマ生成は、日本が主導する国際プロジェクトの大きな成果といえよう。

「JT-60SA」の建設・運転に向けては、2007年より日本原子力研究開発機構(当時、核融合研究開発を担っていた)により、前身の「JT-60」の改修が着手された。2013年より組立が始まり、2019年には心臓部となる「中心ソレノイドコイル」の据付けが行われ、2020年4月に完成。当初は2020年秋頃の初プラズマ生成を目指し、統合試験運転が進められていたが、クライオスタット(超伝導コイルを超低温に維持)内のトラブルにより中断。QSTはEUが設立した事業体「F4E」とともに改修を進め、今秋の初プラズマ達成に向けて2023年5月より再び統合試験運転を行っていた。

核融合は、重水素や三重水素(トリチウム)のような軽い原子核を融合させ、別の重い原子核になるときに発生する大きなエネルギーを取り出す。高温プラズマ閉じ込めが技術的ポイントで、「JT-60SA」は、約マイナス269℃(絶対温度約4度)に冷却された強力な超伝導コイルを使用して、1億度にも達するプラズマを閉じ込める。

今回の初プラズマ生成で、「JT-60」が停止した2008年以来15年ぶりに日本国内のトカマク型装置が始動。QSTでは、「各構成機器が連動してシステムとして機能することを実証でき、BA活動の大きなマイルストーンを達成した」と評価。「JT-60SA」で得られた知見をITERおよび将来の原型炉計画に積極的に活かすとともに、核融合エネルギーの早期実用化に向けた中核的拠点として研究開発を推進していく考えだ。

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